月誕生の謎に迫る 日本の探査機SLIMが初の着陸成功/179
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宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げた日本の無人探査機「SLIM(スリム)」が1月20日、月面着陸に成功した。世界で5カ国目となり、着陸目標地点との誤差100メートル以内の達成は世界初の「ピンポイント着陸」である。
SLIMの機体は高さ2.4メートル、幅2.7メートル、重量700キログラムと比較的小さく、月の90%を占めるマントルを分光カメラで分析したデータを地球へ送信する。これまで月面着陸に成功した米国と旧ソ連の機体は1~3トンと大型で、着陸地点の精度は半径数~十数キロメートルの範囲で降りやすいところにしか降りられなかった。
月で資源探査を行う場合に有利な場所は狭い領域に限られており、資源が存在する場所へ正確に着陸する必要がある。近年は研究者からクレーター近傍の岩を直接調べたいといった、地点を絞り込んだピンポイント着陸が要求されるようになった。
実は、着陸直前にメインエンジン2基の一つに異常が発生し、想定とは異なる姿勢で月面に着陸した。搭載された太陽電池に太陽光が当たらなかったため、しばらく発電ができなくなり、探査機の電源を切って復旧に向けた作業を続けてきた。
1月29日に太陽の向きが変わって太陽電池パネルが稼働し始め、地上との通信に成功した。分光カメラを使って観測対象として絞っていた月面上の6個の岩石の中から、「トイプードル」と名付けられた岩石の撮影に成功した。この岩石は月の地下のマントル由来の鉱物「かんらん石」を含んでいるとみられる。
かんらん石がカギ
今回のミッションは月の形成と進化の謎を解くことである。月の誕生に関しては、約45億年前に別の天体が地球に衝突してできた「ジャイアントインパクト説」がある。この衝突によって地球のマントルが飛び散り、月が作られたと考える。
月には「海」と呼ばれる濃い色の玄武岩で覆われた平らな部分があり、SLIMが着陸した「神酒(みき…
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週刊エコノミスト
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