地震予知が困難なワケ 非可逆現象で三つの「想定外」/180
有料記事
地震予知は国民の悲願だが、先端の科学的知見を用いても、確度の高い予知は難しい。政府は「東海地震」についてこうした認識に立ち、2017年11月からそれまでの予知を前提とした体制を抜本的に転換した。東海地震の想定震源域を含む「南海トラフ巨大地震」について、発生の恐れがあると判断した時点で情報を発信する形に改めたのである。
その背景には、1995年に6400人以上の犠牲者を出した直下型地震の阪神・淡路大震災や、11年の東日本大震災を事前に予知できなかったことがある。特に、マグニチュード(M)9という巨大な規模の東日本大震災が起きることを想定できず、2万人近い犠牲者が出たことは地震学者にとって痛恨の出来事だった。
また、16年の熊本地震ではM6.5の地震の後、M7.3の本震が発生し、さらに大分県まで震源が広がるなど前代未聞の事態が続いた。これらは2030年代に発生が予想される南海トラフ巨大地震の前兆として、西日本で直下型地震が増加するシナリオの一部だが、一般には「想定外の震災」という受け止め方が多い。
専門家も見誤る規模
実は、地震現象とその予知には三つの「想定外」が存在する。一つ目は、地震学者が正しく想定できないことである。東日本大震災の発生前は、東北沖で三十数年おきに繰り返されるM7.5規模の地震は想定されていたが、その数百倍も大きな1000年に1度の巨大地震が起きるとは考えられていなかった。
二つ目の想定外は、地下には地震を起こす未知の活断層が数多く隠れている事実である。特に、大都市の地下に埋もれている活断層は十分な調査が難しい。18年の大阪北部地震では既知の活断層とは異なる場所が震源となっており、その後の調査で二つの異なる動きをする断層によるものとされた。すなわち、調査で明らかにされるまで「未知の活断層」はいつも想定外の地震を起こすのである。
三つ目は、地震現象そのものに関…
残り567文字(全文1367文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める