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教養・歴史 書評

カモにされてしまうことなく、いかにして身を守るか 美村里江

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 効率よくお金や時間を使いたい思いは誰しも持っていると思う。映像界隈(かいわい)ではYouTubeの台頭により、10年ほど前から2時間ドラマや長編の映画を視聴してもらう難しさが議題となり、スマホで視聴する1話数分ドラマを作るなど、エンタメ畑として試行錯誤が続いている。

 しかし「コスパ」だけでなく「タイパ」を追求しすぎると、「楽にもうけたい」思考になっていくのは避けられない。「うまいことやってやろう」という舌なめずりが成就する確率は、いかほどか。『全員“カモ” 「ズルい人」がはびこるこの世界で、まっとうな思考を身につける方法』(ダニエル・シモンズ、クリストファー・チャブリス著、橘冷解説、児島修訳、東洋経済新報社、1980円)。

 だます側が講じる「人間の心の動きを利用している」数多くのカラクリは、読むほどにその裏にある「今より幸せになりたい」根源的な人々の欲求を感じ、少しもの悲しいような気持ちにもなってくる。得をしようと思っていたのに、逆にお尻を振る絶好のカモになっている。

「はっきりとそれを否定する証拠が示されないかぎり、見聞きしたものが本当だと思い込む」、この真実バイアスがいかに詐取の対象になっているか示した後に、身を守るためにできる具体的な方法も提案される。

 なめらかすぎる右肩上がりや、ノイズのないクリアなデータなどは警戒しやすいが、相手が人(それもある程度の付き合いのある人物)になると、見破る難易度は破格だ。ちょうどニュースでは、野球の大谷翔平選手の通訳であった水原一平氏の違法賭博数億円の話について、いったい何があったのかと日米が注目している。実際には誰が誰のカモであったのか、ニュース越しに明かされることは果たしてあるだろうか。

 書籍の帯推薦文をあまりに膨大に書いている人物は、「どの本もほめる=本の良しあしが分かっていない」か、「どの本も読んでいない」可能性がある…

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週刊エコノミスト

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