教養・歴史小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

組織に埋没してしまう自分が嫌です/206

マックス・シュティルナー(1806~1856年)。ドイツの哲学者。本名はヨハン・カスパー・シュミット。極端なエゴイズムで知られる。著書に『唯一者とその所有』がある。(イラスト:いご昭二)
マックス・シュティルナー(1806~1856年)。ドイツの哲学者。本名はヨハン・カスパー・シュミット。極端なエゴイズムで知られる。著書に『唯一者とその所有』がある。(イラスト:いご昭二)

Q 組織の一員であるという以上の自分を持ち続ける方法は? 長年会社に勤めていると、己が組織の一員であるという以上の部分が見えなくなってきます。組織に埋もれることなく、自分を持ち続けるにはどうすればいいでしょうか?(会社員・40代女性)

A 属性という枠から出て、自分を中心とした新世界を獲得しよう

 かつて「会社人間」という言葉がよく使われました、令和の今もそうですよね。どうしても私たちは組織に入ると、その組織の一員としてのアイデンティティーを意識しますから。名刺を出して自己紹介する時もそうです。〇〇社の誰それですというふうに、自分の属性を紹介してしまうのです。

 でも本当は、それではいけないのですよね。いったいどうすれば「自分であり続けること」ができるのか。今回参照したいのは、ドイツの哲学者マックス・シュティルナーです。シュティルナーは、まさに自分とは何かを問い続けた哲学者だといえます。

 彼によると、人間は皆「唯一者」なのです。それは決して属性によって規定される存在ではないということです。私を例に取ると、日本人だとか、男だとか、哲学者だとかいうふうに。でも、そんな人間は世の中にたくさんいます。

 シュティルナーはそうした普遍的な概念による規定が、個々人を抑圧するというのです。たしかに日本人であることも、哲学者であることも、私にとっては属性であると同時に、その枠にはめられてしまうという意味で抑圧にもなります。

エゴイズムの積極性

 ではどうすればいいのか? そこでシュティルナーは、「自分の力を発揮して物事を所有せよ」といいます。つまり、自分という存在は、何を持ち、どこに所属し、何を好むのかと…

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