不完全な人間を肯定的に描く「デカローグ」全10編 3カ月のロングラン開幕 濱田元子
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舞台 新国立劇場「デカローグ」
唯一神の信仰を求め、偶像崇拝や殺人、姦淫(かんいん)、盗みなどを戒める「十戒」は、旧約聖書の出エジプト記で、モーゼがシナイ山で神から授かったとされる。
この「十戒」をモチーフに、「ふたりのベロニカ」などで知られるポーランドの世界的映画監督、クシシュトフ・キェシロフスキ(1941~96年)が発表した作品が「デカローグ」だ。
1980年代のワルシャワの団地を舞台にした全10篇の連作。テレビドラマシリーズの完成前に、劇場用映画として88年に公開された「殺人に関する短いフィルム」(5話)と「愛に関する短いフィルム」(6話)が国際的に高い評価を受けたことでも知られる。
今作はその完全舞台化作品で、全10篇を3期に分けて、総勢50人近くが出演する大規模プロジェクトだ。翻訳を久山宏一、上演台本を須貝英が手掛け、演出は新国立劇場演劇芸術監督の小川絵梨子と、次期芸術監督の就任が発表された上村聡史が5話ずつ担う。
まず4月13日~5月6日にはプログラムA(1・3話)、プログラムB(2・4話)が上演される。
「キェシロフスキ監督は意図的に、登場人物を我々の隣人、我々現代人の象徴として描いている。たくさんの人々の存在を通して、人間が存在することへの根源的な肯定が描かれている」。そう小川芸術監督が制作発表会見で指摘するように、デカローグ2「ある選択に関する物語」(上村演出)は一人暮らしの医師と愛人の子どもを身ごもったバイオリニストの女性が登場し、デカローグ3「あるクリスマス・イヴに関する物語」(小川演出)は家族とクリスマスイブを祝うタクシー運転手のところに元恋人が訪ねてくる…
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週刊エコノミスト
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