中国が欧州に「ほほ笑み外交」 経済安保の溝が足かせに 河津啓介
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中国が欧州に連携強化の秋波を送る「ほほ笑み外交」を展開している。ベルギーやスペインなどとハイレベルの往来を重ね、習近平国家主席が国交樹立60年を迎えるフランスを近く訪問するとも報道された。
王毅共産党政治局員兼外相は3月の全国人民代表大会(全人代)での記者会見で「強い欧州は中国の長期的利益に合致し、強い中国も欧州の根本的利益に合致する」と述べ、関係を重視する姿勢を強調した。
中国は最大のライバルと見なす米国に対抗するため、ロシアと共闘しながら、欧州とも良好な関係を保とうとしている。
欧州連合(EU)安全保障研究所の上級アナリスト、アリス・エクマン氏は米カーネギー国際平和基金公式サイトでのコメント(3月11日)で「北京(中国政府)は欧州を心からは信頼できないと考えているが、米欧間に溝がある場合、欧州を『使える西洋人』と見なす。だからこそ、中国は欧州の『戦略的自主性』を称賛し、米国を孤立させようとしている」と指摘した。
これまで中国と欧州は経済的利益を共有してきたが、その関係は近年、複雑さを増す。ロシアのウクライナ侵攻を巡る中国の親露姿勢に、欧州は不信感を募らせた。米中対立も相まって経済安全保障を重視する機運が高まり、EUは対中依存を抑制する「デリスキング」を打ち出した。
ドイツのメルカトル中国研究所(MERICS)公式サイトの今年の中欧関係を占うコメント(1月25日)で、主任アナリストのレベッカ・アルセサティ氏は「技術競争の地政学的な側面に対する意識の高まりが、今後1年間のEUと中国の関係を決定づけるだろう」との見方を示した。実際、EUの行政執行機関である欧州委員会は1月に先端…
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週刊エコノミスト
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