座談会 20世紀末を四大経済学者で解く~スミス、マルクス、ケインズ、シュンペーターが現在をみれば ①(1994年1月4日)
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1990年代半ば、日本経済はバブル崩壊に苦しみ、世界経済は「社会主義崩壊後」の新秩序はどうなるかの問題に直面していた。混沌とした時代をスミス、マルクス、ケインズ、シュンペーターという経済学の巨頭ならどう考えたのか--。3人の経済学者が議論を交わした座談会を3回にわたって再録する。※記事中の肩書、年齢等は全て当時のままです。
座談会 バブルと社会主義崩壊 20世紀末を四大経済学者で解く
スミス、マルクス、ケインズ、シュンペーターが現在をみれば
20世紀末、社会主義体制は崩壊し、先進資本主義国もバブル崩壊に苦しんでいる。経済学200年の英知はこれらを解明できるのか。スミス、マルクス、ケインズ、シュンペーターの学説の中から新しい経済学のあり方を探る。
大内秀明×水田洋×伊東光晴
(1)バブル経済
-- それではまず、バブル崩壊の話から始めましょう。
水田 18世紀初めに、イギリスで「サウスシー・バブル事件」が起こった。それはホーガスの絵にもなっている。その前にもバブルの絵はいろいろあって、バブルはシャボン玉で描かれている。子供がシャボン玉を吹いていて、その下に髑髏がある。シャボン玉は飛んでいって空しくなるという意味で「バブル」という言葉を使っていたようだ。スミスはそういうものに対して、ものすごく嫌悪感をもっていた。
また当時の「公債制度」は公債所有者が国家の債権者として政治を左右し、地位を獲得することができた。スミスの公債批判はそういう点では、今回のバブルの最中のゼネコン汚職などにもあてはまる。
スミスが言っていることは、「フェアプレーの自由競争」だから、政経癒着は問題外だ。スミスはよく言われるように、道徳哲学の教授だから、潔癖な倫理観をもっていた。ケインズは、自分で投機をやったようだが‥‥。
伊東 やりました。成功している。
大内 リカードもナポレオン戦争景気で株の投機で儲けたね。そのあとで経済学をやった。
水田 ケインズもずいぶん儲けたのでしょう?
伊東 少なくとも、友人たちのカネを運用して、損害を与えていない。世界恐慌も見事に乗り切っている。ただ若い時にカジノで大損をしている。しかし反省していません。マーシャル先生の教えによれば、投機には、実は意味があるんだということで、今度はうまくやってみせるという手紙を出していますね(笑)。
大内 エンゲルスの場合は経営者。マンチェスターで一生懸命稼…
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週刊エコノミスト
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