甚大被害免れた台湾 日本も学ぶべき迅速な地震対応/182
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4月3日に台湾東部の花蓮県沖で発生した最大震度6強の地震では、マグニチュード(M)7.7(日本の気象庁発表)という規模の大きな地震の割に、人的被害が比較的少ない。被害の全容はまだ明らかではないが、台湾は日本と同じく地震の多発地域である(本連載の第181回を参照)。今回は地震の防災体制を含めて被害が抑えられた理由を考えてみよう。
今回の地震では死者17人、負傷者1100人以上(4月13日現在)と報告されているが、揺れの大きさや過去の同規模の地震に比べれば、発災当初に懸念されていたような甚大な被害は免れた。震度6強の揺れを観測した花蓮県は自然の豊かな観光スポットとしても知られているが、地震直後の台湾当局の対応が迅速だった。
現地時間の午前7時58分に発生した地震は朝の通勤・通学時間帯に重なっていたが、発生後2時間で緊急避難所が設置され、住民が避難を始めた。多くの避難所が3時間以内に稼働するというスピード開設には世界中が驚いた。これは2018年2月に発生して死者17人を出したM6.4の地震後に、花蓮県が警察やNGO(非政府組織)と地震防災の連携を強化した成果と考えられている。
台湾の緊急地震速報の仕組みはほぼ日本と同じだが、さらに迅速で的確な対応が可能となった理由は、台湾の地震警報システムが中国からのミサイル攻撃に対して発令されるシステムを使っているからとされる。自治体に24時間体制で配備された救助隊は災害の発生とほぼ同時に対応可能で、これにより本震で崩れかかった建物を余震で倒壊する前に撤去することにも成功した。
「921」の記憶
4月3日の地震は過去25年に発生した中では最大規模だが、近年で最も被害が大きかったのは1999年9月21日に発生した「921地震」である。2400人超が死亡する大災害となり、この日は台湾で防災訓練の日に指定されている。日本で関東大震災(1923年)が起…
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週刊エコノミスト
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