コスター・グループ 米不動産テックの先駆者 宮川淳子
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CoStar Group 賃料などのデータ提供/114
コスター・グループは米不動産情報サービス大手だ。米プリンストン大学の学生だったアンドリュー・フローランス氏(現CEO=最高経営責任者)が1986年、学生寮の一室で始めた小遣い稼ぎの仕事が源流で、2022年に米オンラインメディア「ワシントン・ビジネス・ジャーナル」のインタビューに応じて創業の経緯を語っている。
その内容によると、プログラミングが得意だったフローランス氏は、首都ワシントンの不動産登記簿データを大型汎用(はんよう)コンピューターからパソコンに移す仕事を請け負った。試行錯誤の末、建物の所有者、面積、賃貸状況、賃料、設計者、仲介業者の正確なデータを一覧表示するという今までなかったデータベースが完成。その内容を記載した『コーナーストーン』という月刊の建物情報誌を創刊して販売し始めた。
フローランス氏は87年、データ販売会社「リアルティー・インフォメーション・グループ」をワシントン郊外のバージニア州ベセスダに設立した。月刊誌の発行から商業用不動産に関するデータをフロッピーディスク、後にCD-ROMなどで閲覧させる会員制サービスに変え、91年にはパソコンでデータを閲覧させるサービス「コスター」を始めた。
90年代に入ると、米集合住宅情報会社アパートメンツ・ドット・コムの前身会社や、米事業用不動産情報会社ループネットといった「不動産テック」が相次いで創業した。一方、リアルティー・インフォメーション・グループは97年までにデータの提供エリアをニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、サンフランシスコなどに広げた。
98年には米ナスダック証券取引所に上場し、99年にはコスター・グループに社名を変更した。2000年代に英国とフランスの同業他社を買収して提供エリアをさらに拡大しており、23年末現在では世界14カ国に74拠点を設け、100万以上の会員に情報サービスを提供している。また、ループネットを12年に、アパートメンツ・ドット・コムを14年にそれぞれ買収している。
51四半期連続の増収
米国ではコロナ禍を経て在宅勤務が定着し、22年以降は金利が上昇したことから、商業用不動産の市況が急激に悪化した。しかし、同社の23年売上高は前年比12%増の24億5500万ドル(約3781億円)と好調だった。四半期売上高はリーマン・ショック後の不況が終わった11年第2四半期(4~6月)から23年第4四半期(10~12月)まで51四半期連続で前年同期比10%以上の増加となり、今年も同程度の伸びを見込んでいる。会員料収入が23年売上高の95%を…
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週刊エコノミスト
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