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教養・歴史 書評

社会で支える育児へ 人気バンド・デシネ邦訳出来! 荻上チキ

 待ちに待っていたバンド・デシネ(仏語圏の漫画)が邦訳された。『ターラの夢見た家族生活 親子をまるごと支えるフランスの在宅教育支援』(パボ著、安發(あわ)明子訳、サウザンブックス社、3300円)。普段は活字を中心に紹介する本コーナーではあるが、間違いなく現代日本に必要な本なので紹介したい。

 ターラは8歳の女の子。施設で生活する彼女は、家で母親と暮らすことを夢見ている。しかし母親は、精神疾患などの課題を抱え、子ども専門裁判官からは、在宅教育支援を受けることが条件づけられた。

 ターラのところにやってきたのは、エデュケーターのパボ。ターラはパボとたくさん話をしながら、母親を含めた、自分たちなりの家族の形を築いていこうとする。

 フランスでの虐待対応は、虐待が発生してから対処することに限らず、子どもを取り巻く状況への小さな「心配」があった段階から介入支援を行う。虐待が発生してからでは、根深いトラウマが既に生まれている。そのため、早期での、しかも家族まるごとの支援が重視される。

 在宅教育支援は、「心配」な状況があると判断された子どもに対し、エデュケーターが教育的支援を行うもの。エデュケーターは国家資格。各家庭を支援するだけでなく、「路上エデュケーター」「ネットエデュケーター」なども存在する。

 大人顔負けの弁論術を持つターラだが、母や生活についての悩みなどを一人で抱えきれず、イマジナリーな友人と対話を行うことも少なくない。しかしパボと出会うことで、対等でちょっと頼りない仲間ができ、一歩ずつ生活改善を経験する。

 本書は、シリアスなタッチではなく、コメディータッチのストーリー漫画。啓蒙(けいもう)的ではなく、少女ターラとエデュケーター・パボの成長や人間臭さがユニークに描かれている。物語を楽しく読むことで、フランスの児童支援の仕組みについても学ぶことができる仕掛けになっている。

 昨年フランスに…

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週刊エコノミスト

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