落雷被害に備える㊤ 実は地上から立ち昇る電光/184
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宮崎市の高校グラウンドで4月3日、サッカーの練習試合中に雷が落ち、男子生徒ら18人が搬送され1人が意識不明の重体となった。雷は夏の風物詩と思われがちだが、実は時期を問わず被害が生じている。雷が発生する仕組みを知ることで、被害防止に備えたい。
雷は空に入道雲が立ち昇った時に発生する。入道雲は気象用語では「積乱雲」と言い、地上と上空との間に温度差があり大気が不安定になった場合に生まれる。激しい上昇気流によって地表付近の湿った空気が持ち上げられる。この結果、空気中に含まれている水蒸気が凝結し、雲が急速に立ち昇る。積乱雲は雷を伴うので「雷雲」とも呼ばれる。
積乱雲の中には細かな水滴や氷が浮いている。具体的には雲を作っている小さな氷晶や、これより少し大きい霰(あられ)、さらに大きい雹(ひょう)などである。こうした粒子は雷雲の中に発生した乱気流によって互いに衝突し、静電気を帯び始める。
氷晶などの小さい粒子はプラスに帯電し、霰や雹などの大きな粒子はマイナスに帯電する(図)。雷雲の中では上昇気流と下降気流の両方が入り乱れて発生し、激しい対流が起きる。そして、小さな氷晶は上昇気流によって雲の上方に移動する。一方、粒の大きな霰や雹は下方に移動し、雲の下部にたまる。
この結果、雷雲の中では上の部分がプラスに帯電し、下の部分がマイナスに帯電するという電気的な2層構造ができあがる。しばらくすると雷雲の上部と下部の間で激しい放電が起こり、上空で見られる稲妻となる。
冬に多い日本海側
雷雲の底部はマイナスに帯電しているので、この電荷に引き寄せられて雲に近い地上部分がプラスに帯電する。しばらくこの状態が続くと、今度は雲の底部と地表との間で放電が起き、数万アンペアの大電流が流れる。これがすなわち落雷である。稲妻の通り道はセ氏1万度以上の高温になり、周囲の大気に熱を与えて急速に膨張させるため、雷鳴が発生する…
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週刊エコノミスト
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