〈緊急分析〉東京三菱銀行(スーパーバンク)の衝撃 本当の銀行大再編の時代が始まった 及能正男(1995年4月11日)
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バブル崩壊後の1990年代から2000年代にかけ日本では大規模な金融再編が続いた。95年に発表された三菱銀行と東京銀行の合併について、銀行再編に詳しい及能正男・西南大学教授が行った分析を振り返る。※記事中の肩書、年齢等は全て当時のままです。
三菱銀行と東京銀行が来年4月をメドに合併し、世界一のスーパーバンクが誕生することになった。バブル崩壊の苦しみを経て今、真の銀行大再編の時代が始まった。
市場を吹き抜けた旋風
決算期配当落ち日である3月28日午後2時前、東京株式市場に突如旋風が吹き抜けた。三菱・東京両銀行対等合併が報じられたのである。報道は、前日の蔵相利下げ示唆、円高一服、シカゴ日経平均先物堅調などを受け、権利落ちを埋めて反騰気味だった市況の流れを一気にあおり、この日の日経平均株価は585円高で引けた。この間、両行は報道の確認を拒否し、蔵相も両行首脳は明29日に来訪予定と答えるだけだったが、ついに午後8時半、東京銀行本店で両行頭取が記者会見を行った。この記念すべき出来事は、株式市場が開かれている最中に重要情報が漏洩するという形の異様な出現ぶりとなったわけである。
記者会見でも両頭取は、当局との相談はこれからとか、合併期日を詰めている段階だとか、歯切れは必ずしも良くなかったが、「基本的にその方向で事態は進捗中」として基本合意(対等合併、来年4月合併、新行名は東京三菱銀行等)の成立を認め、円満な両行首脳の交歓ぶりを披露した。
高垣佑東銀頭取は、「21世紀を展望し、新しい入れ物が欲しいと両行が思い、ここ数年来それを温め、両行どちらからともなく思い思われた基本合意」と述べた。だが、93年4月の金融制度改革法施行で、長信銀、信託、外為専門行等と普通銀行等他業態との合併が可能となった時点で、早くも三菱・東銀、日本興業・東銀などの合併の噂は高かった。今次の合併への反響も、噂の現実化といった…
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週刊エコノミスト
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