国際・政治 東奔政走

総選挙か見送りか、迫られる首相 地方の声厳しく、自滅も 及川正也

 通常国会の会期末(6月23日)まで1カ月を切った。会期末の衆院解散を想定すると、投開票日は7月21日か7月28日のどちらかになる可能性が高い。ただし、7月28日は直前の同26日に開会するパリ五輪の期間と重なる。これを避けて同21日の実施を念頭に置くと、衆院解散は6月11日から同23日までの期間だ。同13~15日はイタリアで主要7カ国首脳会議(サミット)、会期末の23日は沖縄全戦没者追悼式があり、日程は厳しい。最終局面で岸田文雄首相はどんな決断をするのか。

立民に抜かれた自民

「総選挙になれば自民党は惨敗する」。5月20日、東京・永田町が色めき立った。毎日新聞の世論調査で立憲民主党が自民党を抜いて支持政党のトップに躍り出たからだ。立民20%に対し、自民は17%。今年2月には両党が16%で張り合ったが、立民は前月の15%から5ポイント伸ばし、岸田政権発足後では最高を記録した。

 4月28日に実施された衆院3補選で「全勝」した余勢を駆ってのことだろう。衝撃は、自民党に大きかった。岸田政権下で最高だった37%(2022年5月)の高支持率はもはや見る影もなく、「政治とカネ」に揺れた昨年12月以降、20%前後に低迷している。今回は自民が前月より3ポイント低下する一方での立民の急伸だった。

 自民の劣勢は、衆院補選後も続いている。毎日調査が流れる前日の5月19日に実施された神奈川県小田原市長選で自民党が推薦した現職が大敗した。何より自民の窮状を浮き彫りにしたのが、有力者や人気の高い自民党議員がそろう神奈川での敗北だったことだ。

 小田原市が選挙区の牧島かれん元行政改革担当相はもちろん、牧島氏と縁の深い河野太郎デジタル担当相や小泉進次郎元環境相らが相次いで応援に駆けつけたが、結果は元職にダブルスコアに近い差をつけられた。地元紙の神奈川新聞によると、現職市長が選挙に敗れ、1期で交代するのは小田原市政では戦後初。県議の一人は自民党幹部に「自民への逆風を非常に受けた選挙戦だった」と伝えた。

「河野・小泉の二枚看板をしても勝利できないほど自民党は支持を失っている」という危機感は、神奈川にとどまらない。党幹部が全国各地で行っている「政治刷新車座対話」でも、「このままでは選挙は戦えない」「自民党におごりがあった」「募金をしても、『自分たちで使うんだろう』と言われた」など厳しい声が噴出している。

面目丸つぶれ

 その責任が、総じて岸田執行部にあることに誰も異論はないだろう。支持を挽回しようとしても、空回りする場面ばかりが目立つ。

 6月から始まった所得税と住民税の定額減税で給与明細への減税額記載を義務付けたことに、野党から「選挙目当ての政権PR」と皮肉る声が上がった。立民の辻元清美参院議員は5月22日の参院予算委で「減税はアピール、増税は隠す。自民党は裏金で脱税しておいて、何を言っているんだと国民に思わ…

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週刊エコノミスト

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