「解散回避」が与党の合言葉 孤立深める首相は瀬戸際に 人羅格
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「政治とカネ」を巡る問題は、抜本改革と程遠い見直しで与党が乗り切りを図り、通常国会の会期末を迎えた。
いちかばちかの衆院解散で秋の自民党総裁選の乗り切りを探るという岸田文雄首相の延命シナリオは、与党に封じ込まれている。傷だらけの政権は、いよいよ瀬戸際に立たされた。
ガバナンス崩壊といわれても仕方がない、自民党の混乱ぶりである。政治資金規正法改正案の自民案の再修正を巡り、衆院通過を前にして方針は二転三転した。
ネコの目のように揺れ動く日程に立憲民主党の安住淳国対委員長は「さすがの民主党政権もここまでやったことはない。ひどい」と妙な理屈であきれていた。
公明党や、野党の日本維新の会との合意を巡る自民の譲歩は、バナナのたたき売りの様相だった。「出来レース」ではない、行き当たりばったりだ。
焦点だった政治資金パーティー券の購入者の公開基準を巡り、自民は公明が主張した「5万円超」への引き下げを受け入れて合意した。公明は裏金問題に関して「自民と同じ穴のムジナにみられたくない」(山口那津男代表)と、火の粉を払うことにやっきだった。いったんは自民案の「10万円超」になびいたが、世論の反発を感じ一転、態度を硬化させた。
世論と最後までズレ
自民と、維新の会の政策活動費を巡る合意も迷走した。党首合意の直後から食い違いが発覚し、自民は再修正に追い込まれた。
政治とカネで一応の結論を出さないと、総裁選乗り切りどころではない。首相が最終的に公明、維新への譲歩を決めたのは、それ以外に道がなかったためだ。
ただし、譲歩といっても企業・団体献金の規制強化に踏み込まず、政策活動費に至っては領収書公開を「10年後」とするような、逆に国民の反発をあおりかねない内容での衆院通過だ。首相がこれで「決断」をアピールし、あわよくば衆院解散への局面転換を期待していたとすれば、世間との感覚があまりにずれている。
皮肉なことに、首相を除き、与党は「とにかく衆院解散は避けたい」思惑は一致しており、早期合意の追い風になった。調整が長引くと国会の会期延長につながり、衆院解散を誘発しやすくなる。不人気な岸田政権下での解散は、与党にとって悪夢だ。
憲法改正問題も「解散こわい」心理が影響した。自民党タカ派は首相が「総裁任期中に改憲実現」と発言していたことを足場に、衆院憲法審査会での改憲案取りまとめを促した。
だが、党全体の空気は違った。憲法問題で会期が延長されればそれこそ首相に「解散」の大義名分を与えかねないためだ。
変化示した港区長選
旧態依然の迷走をよそに、東京で「変化」を感じさせる出来事もあった。6月2日投開票の港区長選で、新人の元区議、清家愛氏(49)が6選を目指した自民、公明推薦の現職候補を僅差で破り当選した。東京23区のうち、現職は7人目の女性区長となる。
清家氏は港区出身。産経新聞記者を経て子育て支援策に関心を…
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週刊エコノミスト
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