政権奪取への動き鈍い立憲 「次の首相」と見られぬ泉代表 仙石恭
有料記事
自民党が政権に復帰してから11年半。報道各社の世論調査では、次の衆院選で「政権交代を求める」が、自公政権の継続を望む回答を上回ることが珍しくなくなっている。毎日新聞の4月の世論調査は、「政権交代してほしい」が6割強となり、「してほしくない」は3割弱だった。
自民派閥の政治資金パーティー裏金事件を目の当たりにした多くの国民が、そう思うのは不思議ではない。自民は自浄能力に欠けている。真相は解明されないままで、再発防止に向けた政治改革に後ろ向きな姿勢が際立った。岸田文雄首相も指導力を発揮しているとは言い難い。
自民支持者も「今度ばかりは、お灸(きゅう)を据えなければ」と怒り、野党支持層や無党派層は「もう自民には任せられない」との意識があるのだろう。
公認目標は200人超
ここで問われるのが、野党第1党である立憲民主党の力量だ。
立憲は4月の衆院3補選で全勝した。東京15区、長崎3区は自民が候補を擁立しなかったが、島根1区は自民との一騎打ちを制した。5月の静岡県知事選でも立憲が推薦した候補が勝利。東京都議補選(目黒区選挙区、改選数2)では、立憲元職らが勝ち、自民新人は敗れた。立憲に勢いがあり、自民は苦戦続きであることは明らかだ。
次の衆院選はどうなるだろうか。465議席を争い、政権を奪うには233議席以上が必要となる。
2021年の前回衆院選で、立憲から240人が出馬したが、当選者は96人にとどまった。現時点で擁立した公認候補は約180人で、目標は200人超だという。
立憲は政権交代を目指している。次期衆院選で、追い風に乗って大勝した場合は、どれぐらいの議席が得られるだろうか。総議席数は異なるが、民主党政権が誕生した09年衆院選で、旧民主は308議席を獲得している。
立憲の現有議席は98。「200議席は取れる」と強気の予測をする立憲関係者もいるが少数派だ。
自民を上回り、第1党になるには、180議席程度が必要だとの見方がある。
仮にそうなった場合、過半数233には50議席ほど足りない。この不足分は、どのようにして集めるのだろうか。
前回選で41議席を得た、日本維新の会は議席を増やすとの見方は根強い。しかし、立憲は維新といがみ合う場面が多かった。両党が組むのは難しいだろう。維新が自公に付けば、立憲が政権を握るのはより困難となる。
維新抜きで、国民民主党、共産党、れいわ新選組、社民党、野党系無所属の議席をすべて合わせたとしても、233議席に達するのは容易ではない。
想像たくましい、ある立憲議員はこう語る。「政権転落の危機に直面した自民から、数十人が割って出てきたら、それを取り込めばいい」
「立憲陣営に入れば、首相の椅子を差し出す」と、持ちかければよいのだという。現実味が乏しい、立憲に都合のよい案だ。そうした政界再編までにらんだ動きは見えない。
首相の椅子を差し出すという発…
残り853文字(全文2053文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める