激戦の都知事選に水を差す不可解な政党ステルス戦術 与良正男
有料記事
東京都知事選の投開票が7月7日に迫った。立候補者の数はおびただしいが、事実上、3選を目指す小池百合子知事と蓮舫・前立憲民主党参院議員との一騎打ちという構図に変わりはない。
都知事選は、ここしばらく1人の候補者が圧勝する選挙が続いてきた。しかし、今回は久しぶりに激戦の様相だ。その意味で、これまでも出馬を取りざたされながら固辞してきた蓮舫氏が決断した点は素直に評価したい。
当然、選挙の結果は岸田文雄政権に大きな影響をもたらす。
……と分かり切った話をあえて書いたのには理由がある。国政に直結するのは確実なのに、とりわけ小池氏の陣営は「自民党隠し」に躍起となっているからだ。
それが功を奏するかどうかは、分からない。だが、隠せば隠すほど今の自民党と岸田政権の苦しさをあらわにしてしまっている。そんな首都決戦だ。
「自民党の議員が支援する動きは大変心強い」
出馬表明後の6月14日、小池氏が記者会見で語った言葉が象徴的だった。支援するのは自民党という組織ではなく、あくまで個々の議員だというわけだ。
自民党は4月の衆院3補選で不戦敗も含めて全敗し、5月の静岡県知事選でも推薦候補が敗れた。強引に成立させた改正政治資金規正法も「抜け道だらけ」と批判され、内閣支持率は低迷が続く。
だから自民党が前面に出てもらっては選挙戦ではマイナスにしかならない、という話である。
会見で小池氏が「あまり国政を持ち込むと都民は戸惑われるのでは」と皮肉交じりに語ったのも、自民党批判を強める蓮舫氏をけん制し、国政と都政を切り離す狙いからだろう。
利害の一致
自民党も文句は言えない。
元々、小池氏に勝てるような独自候補は見つからない。そんな中、推薦はしなくても小池氏が勝てば連敗を食い止めた形にはなる。負けたら「党として支援したわけではない」と弁明すればいい。そんなもくろみだ。
小池陣営は支援の受け皿として確認団体を登録する形をとった。確認団体はポスターやビラの作製などが認められている。自民党が得意とする各種団体への働き掛けも実際には可能となる。
従来ある方法だが、今回、これを主導してきたのが自民党の萩生田光一前政調会長だ。
裏金問題の当事者でありながら萩生田氏が自民党の東京都連会長に留任したのは、小池氏と太いパイプを持っていることが大きな理由だったとされる。
小池氏も3選された後の都議会運営を考えれば、自民党を敵に回すわけにはいかない。かつての人気が陰りを見せる中、自民党が目立たたない形で支援するのは渡りに船だった。
こうして利害は一致した。
対する蓮舫氏も立憲民主党を離党し、どの政党からも推薦を受けない無所属での立候補となった。ただし、支援の主体は立憲民主党と共産党であることは、これまた誰もが知っている。
案の定、共産党との共闘を嫌う連合東京は小池氏支持を決定し、国民民主党も足並みをそろえたことから、当初…
残り844文字(全文2044文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める