自民党内から指導力不足問う声 形成されつつある“岸田包囲網” 伊藤智永
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国会会期末(6月23日)まで1カ月を切った。自民党内に与党として延命するには、岸田文雄首相による衆院解散を回避し、9月の総裁選までに何とか退陣へ追い込まねば、という焦りに駆られた不穏な空気が膨らんでいる。
5月14日夜、東京・銀座の日本料理店に懐かしい顔ぶれが集った。小泉純一郎元首相、山崎拓元党副総裁、武部勤元幹事長、亀井静香元金融担当相。「幾多の政局を勝ち残った長期政権のレジェンド」である小泉氏ゆかりの面々だ。議員を辞めたOB会だが、この日はゲストの現役政治家として小泉政権の防衛庁長官(当時)を2年務めた石破茂元幹事長が出席した。
石破氏を励ます小泉氏
小泉氏らは以前「4月の衆院3補選で自民党が全敗したら岸田政権は終わりだろう」と語り合っていたが、いざ全敗してもそういう動きは起きていない。世論調査で「ポスト岸田」候補1番手の石破氏を招いたのは、奮起を促す狙いもあったことだろう。
小泉氏が石破氏に何度も諭した。「総理になるには、才能と努力と運が必要だが、努力とは何か。政策もいいが、何と言っても義理と人情を大切にすることだよ。そこを間違えちゃいかん」。次の総裁選に照準を定めた党内支持固めの心構えである。さらに「ポスト岸田」候補2番手の小泉進次郎元環境相について「いま43歳だけど、50歳になるまで総裁選には立候補させない。これから数年間は、次の総理を助ける役割を続けるように言っている」とも言った。石破氏が総裁選に挑む時は、進次郎氏に全面的に応援させると請け合うような文脈だった。
「ポスト岸田」候補3番手の河野太郎デジタル相は、マイナンバーカードの普及など実績が伴わず、人気は下降気味。所属する麻生派が唯一解散を拒んでいるため、動きを制約されている。「ポスト岸田」最右翼の立場を固めつつある石破氏は、小泉氏に「ご注意を肝に銘じます。こんな時だからこそ当面は岸田内閣を支えることに徹したい」と答えたという。
岸田氏は国会会期末の衆院解散ができなければ、閉会後に求心力を取り戻すための内閣改造・党役員人事を構想するだろうとみられている。石破氏を重要閣僚起用で閣内に封じ込め、総裁選に出られないようにする魂胆と疑われるのは承知だ。石破氏は入閣要請があった場合、どう応じるか。そこは政局の山場の一つになる。
身内からの引責勧告
「岸田首相のままでは選挙を戦えない」という危機感から、自民党内には政治資金パーティー裏金事件を巡り、岸田氏の指導力不足・無責任さを問う発言が相次ぐ異常事態となっている。
岸田派所属の初代デジタル相だった平井卓也広報本部長は5月15日、「(政治資金収支報告書への)不記載の問題に正面から向き合うべきだった。派閥解消とか党内処分とかどんどん分かりづらくし、自民党自ら墓穴を掘ってしまった」と悔やんだ。東京都内で党が開いた政治刷新車座対話に参加した後、記者団に述べた。どちらも…
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週刊エコノミスト
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