内閣不信任案で自民は分裂? 立憲民主が狙う次のシナリオ 与良正男
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岸田文雄首相は自民、公明両党の反対を押し切って衆院の解散に打って出るのか。それとも秋の自民党総裁選への出馬を断念して退陣の道を選ぶのか──。
双方の見方が交錯する中で通常国会は終盤に入った。会期(6月23日まで)が延長される可能性はあるとはいえ、岸田氏がいよいよ土壇場の選択を迫られてきたことだけは間違いない。
言うまでもなく、終盤国会最大の焦点は、自民党の派閥パーティーをめぐる裏金事件を受けた政治資金規正法の改正だ。
大型連休中の外遊を終えて5月6日、帰国した岸田氏は、早々に自民党の担当者を呼んで、公明党との合意を急ぐよう指示した。
先の衆院3補選で惨敗した自民党にとって、今の苦境を脱するためには、世間が納得するような改正が最低限必要となる。
岸田氏本人もそれは十分、承知しているのだろう。強い危機感の表れでもあった。
ところが実際に目立っているのは自民党の後ろ向きな姿勢ばかりである。
「なんちゃって連座制」
自民党は公明党との協議で政治家個人に支出している「政策活動費」の使途公開を義務化するなどして、どうにか合意の形は整えた。しかし、野党との溝は埋まりそうもない。その一つが「連座制」の導入だ。
裏金事件では派閥の会計責任者らに加え、政治資金収支報告書に記載していない額が4000万円以上だった議員3人が起訴されたものの、それ以外の議員は立件されなかった。
今の規正法では収支報告書の記載は会計責任者に義務づけられている。このため仮に不記載などがあっても会計責任者しか処罰されないケースがほとんどだ。
政治倫理審査会に出席した自民党の世耕弘成前参院幹事長らが「秘書に任せきりだった」と繰り返したのは記憶に新しい。こんな責任逃れが通用していることが、有権者の政治不信を高める大きな要因であり、連座制導入は改正議論の本丸だといっていい。
公職選挙法の規定では、候補者の親族や秘書、出納責任者らが買収などの罪で一定以上の刑が確定した場合には、たとえ候補者本人が関与していなくても当選は無効となって、5年間、同じ選挙区で立候補できなくなる。
当然、この制度を政治資金規正法にも導入すべきだと考えている有権者は多いはずだ。
にもかかわらず、自民党がひねり出した案は、①収支報告書が適正かどうか、議員がチェックしたことを示す「確認書」を作成する、②会計責任者が処罰された場合、議員が定められた項目をきちんとチェックしないまま確認書を交付していれば、議員も罰せられる──という、なんとも複雑で分かりにくいものだった。
確かに確認書を義務付ければ、「知らなかった」「秘書に任せていた」といった言い訳は通用しなくなるかもしれない。ただしこれでは、「確認はしたけれども不正には気づかなかった」、あるいは「気づけなかった」といった言い逃れが可能とならないか。
立憲民主党の蓮舫氏が国会審議で「なんちゃって連座…
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週刊エコノミスト
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