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ソニーGとパナHD なぜ時価総額が5倍近くも開いたのか 浜田健太郎・編集部
ソニーグループ(G)とパナソニックホールディングス(HD)の業績や株式市場での評価の差が鮮明だ(表)。ライバル関係も薄れてきた。何が明暗を分けたのか。
2024年3月期に連結売上高(13兆208億円)が4年連続で過去最高だったソニーG。5月23日の経営方針説明会で27年3月期までの3年間で1兆8000億円をコンテンツIP(知的財産)に投じると発表。この場でソニーGが強調したのは、「グループシナジーの最大化」だ。
同社は20世紀の後半、音楽事業と映画事業を大型買収で傘下に収めた。1994年にはゲーム事業に参入し、コンテンツ分野を拡充。当初は、相乗効果が不明だったが、約30年を経てシナジーが格段に進化した。同社は、センシング、リアルタイム三次元映像処理、音響などの領域で、ゲームや映画、アニメ、音楽といったコンテンツの創作で必須となる機器や技術を豊富に提供する。「クリエーターへの貢献を重要視している」と語る吉田憲一郎会長兼CEOの口調からは、デジタルコンテンツを制作する上で、ソニーGが世界で最有力のプラットフォーマーになっているとの自負が漂う。
最高益で危機的状況
一方のパナソニックHD。24年3月期は、電気自動車(EV)用の電池事業に対して米国政府による補助金の押し上げ効果もあり、当期純利益は4439億円と過去最高を更新。にもかかわらず、楠見雄規社長グループCEOは5月17日の経営戦略説明会で、「危機的状況だ」と強い言葉を繰り出した。楠見氏の反省は、22年3月期〜24年3月期中計における目標の未達(株主資本利益率10%以上、累積営業利益1.5兆円)に言及したものだ。
楠見氏は5月21日、本誌など一部メディアの取材で、株式市場の厳しい評価について、「車載電池など成長3分野で結果を出せていない」ことを理由に挙げた。
電機産業に詳しい早稲田大学ビジネススクールの長内厚教授は、ソニーGについて、「長期的な視点で投資や事業選択を継続した成果が出ている。安易に海外市場から撤退せずに、グローバル市場で事業を進めてきたことが大きい」とみる。
逆にパナHDは、グローバル化の出遅れに懸念を示す。売上高に占める日本比率は、ソニーGの23%に対してパナHDは40%。長内教授は、「パナソニックコネクト(企業向けソリューション)や、米ブルーヨンダー(サプライチェーンマネジメントソフト)買収など、部分的にグローバル化を達成している部門があるが、パナHD全体によい影響を与えるほどには成長していない」と指摘。その上で同教授は、「家電は市場が縮小している国内中心で、利益率は上げようもない。付加価値の高い商品が売れる欧米市場の拡大に、今からでも取り組むべきではないか」と話している。
(浜田健太郎・編集部)
週刊エコノミスト2024年6月11・18日合併号掲載
FOCUS ソニーとパナソニック 時価総額に5倍近い開き グローバル化に差異=浜田健太郎