習指導部が日韓接近に転じた背景は経済停滞・米中対立・露朝接近 河津啓介
有料記事
4年半ぶりの日中韓首脳会談が5月27日にソウルで開かれた。中国の習近平指導部がここに来て日韓両国との対話に動いたのはなぜなのか。中国側の論評から読み解いてみたい。
まず、長引く景気低迷が日韓への接近を後押ししたとみられる。中国メディアは今回の会談を、停滞していた日韓両国との関係の「再スタート」と評価して実務協力の重要性を強調した。
会談で合意した「日中韓自由貿易協定(FTA)」の交渉再開についても、中国側が積極的だったようだ。中国の昨年の国別貿易額を見ると、1位が米国、2位が日本、3位が韓国。中国としては、米中対立の焦点である半導体分野などで独自の強みを持つ日韓を、経済パートナーとしてつなぎ留めておきたいはずだ。
1泊2日の短い日程で、中国の李強首相が単独で韓国サムスン電子の李在鎔会長と会談する機会を設けたことが象徴といえる。李首相はここで「外資企業が安心した気持ちで中国で投資し、発展できるようにしていく」と秋波を送った。
また、経済面の動機だけでなく、米国主導の対中包囲網にくさびを打つという狙いも見逃せない。中国社会科学院日本研究所の楊伯江所長は中国英字紙『チャイナデーリー』(電子版)への寄稿(5月24日)で「現在、北東アジア地域は大国のせめぎ合いと国際秩序の再構築の焦点となっている」と警鐘を鳴らした。中国では、昨年8月に米国で開かれた日米韓首脳会談を契機に、日米韓の連携強化への危機感が急速に高まっている。
露朝接近も不安定要因
吉林大学国家発展・安全研究院の郭鋭・副院長も同紙への寄稿(5月21日)で「米国は日韓の潜在的な軍事力を解き放ち、北東アジアでの主導権を握り、中国との…
残り680文字(全文1380文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める