バイデン政権の対中関税引き上げに「自由貿易時代の終わり」の指摘も 岩田太郎
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米バイデン政権は5月14日、米国が不公正だと見なした国に対し報復関税を課すことができる通商法301条を発動し、中国から輸入される電気自動車(EV)、バッテリー、半導体、鉄鋼・アルミニウム、医療品などの関税率引き上げを発表した。新たな対中関税が米消費者や企業に与える影響に関して議論が起こっているが、立場によって温度差が見られる。
イエレン米財務長官は5月14日に出演した公共放送PBSの番組で、「対中追加関税が、米消費者の直面する物価を大幅に上昇させるとは思わない」と述べ、逆に関税が「米企業と労働者を守る」「長期的には生産価格を下げる」との考えを示した。
こうした見解に対しては、政権の「身内」である一部の民主党政治家からも異論が出ている。そのひとり、西部コロラド州のジャレッド・ポリス知事は5月14日にソーシャルメディアのⅩで、「米消費者にとり、ひどい知らせだ。関税引き上げは、米国人に対する直接的かつ逆進性のある課税に等しく、すべての世帯が悪影響を被る」と投稿した。
また、米国服装靴類協会(AAFA)のスティーブ・ラマー会長も同日付の声明で、「アパレルや靴類、アクセサリーや繊維に対する通商法301条の広範な適用の継続は米消費者と米製造業に大きな打撃だ。輸入業者や製造企業は、関税を値上げの形で消費者に転嫁せざるを得ないからだ。米世帯が物価高にあえいでいるタイミングでの必需品に対する追加関税は、まったく必要がない」と述べた。
一方、中国からのパネル製品との競争にさらされている米太陽エネルギー産業協会は5月14日付の声明で、「関税引き上げが米製造業者の経営状況の改善に役立つことは明らかだ…
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週刊エコノミスト
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