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対中姿勢でEUに亀裂 デリスキングの欧州委と仏 融和的な独 熊谷徹

ショルツ独首相。融和的な対中姿勢に批判も(2024年5月、ベルリンで) Bloomberg
ショルツ独首相。融和的な対中姿勢に批判も(2024年5月、ベルリンで) Bloomberg

 対中経済依存度引き下げを目指す欧州連合(EU)のデリスキング(リスク軽減)政策をめぐり、ドイツとフランス・EUの間の不協和音が強まっている。中国の習近平国家主席の5年ぶりの訪欧は、EU加盟国間の亀裂を露呈した。

 習主席は5月6日、パリでマクロン大統領と欧州委員会のフォンデアライエン委員長と会談。独保守系日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』は同6日付電子版で、「フォンデアライエン委員長は、習主席に対し『世界は中国の生産過剰により作られた大量の製品を吸収することはできない』と語った」と報じた。同委員長は、「中国が態度を変えない場合は、EUは自衛措置を取らざるを得ない」と述べた。

 現在EUは中国が欧州に輸出する電気自動車(EV)の価格が、「政府補助金により不当に安くされている疑いがある」として調査中だ。「クロ」となれば、中国から欧州に輸出されるEVについて、EUが制裁関税を課す可能性が大きい。習主席は新華社通信に対して「中国の生産過剰という問題は存在しない。低い価格はインフレ圧力を下げる利点がある」とのコメントを発表。EUに反論した。

独首相は経済界に配慮

 EU最大の経済大国ドイツのショルツ首相は、習氏のパリ訪問の約3週間前に北京を訪問し、融和的な態度を打ち出していた。

 独週刊新聞『ツァイト』は4月16日付電子版で「ショルツ首相は(独自動車大手の)BMWやメルセデス・ベンツの社長らとともに3日間中国を訪問した。最重要議題はウクライナ戦争と貿易だった。戦争については、習主席にプーチン露大統領に対して影響力を行使するよう求めたが、中国側は『我々は中立』との公式見解を繰り返し…

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