不法移民のルワンダ移送 英議会の可決に非難高まる 木村正人
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英国に不法入国した人々の一部をアフリカ東部の国、ルワンダに送り、庇護申請の手続きを同国に「外注」する法案について、英議会は5カ月に及ぶ論争の末、4月23日未明に可決した。超党派調査機関「移民ウオッチ英国」によると、英仏海峡を渡る密航者は2018年の299人から22年4万5774人と激増。昨年2万9437人に減ったものの今年は8000人を超え、保守党支持者から無策の政府を非難する声が強まっていた。
支持率が低迷するスナク英首相は同月29日、自発的に英国を去ることに同意した難民申請者をルワンダに送った。だが、5月2日の統一地方選で与党・保守党は474議席を失い惨敗。保守党は断末魔の様相だ。不法入国した難民申請者のルワンダ移送について、英紙『ガーディアン』の社説(電子版、4月23日付)は「ルワンダ移送が海峡を渡るボートを止めるという政府の主張には根拠がない」と切り捨てる。
新法でルワンダは「安全な国」とされ、難民申請者を移送することが合法になった。公的支出監視委員会は1人当たりの初期費用を180万ポンド(約3億5000万円)と見積もる。ばかげた金額だ。「有権者の外国人嫌悪感情をあおり、強硬な右派ポピュリストとリベラルな中道右派の残党との亀裂を覆い隠そうとしているが、はっきりしているのはボート難民を解消できないということだ」(ガーディアン紙)
すでに5万2000人がボートで英国に渡り、宙ぶらりんにされている。グランディ国連難民高等弁務官は「憂慮すべき世界的前例」と非難する。「英国は人権尊重から無謀かつ不名誉な方向へかじを切った」と『ガーディアン』紙は憂う。
狙いは「総選挙対策」
英紙『…
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週刊エコノミスト
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