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トヨタ本体など5社でも認証不正発覚 日本ブランド失墜か 河村靖史
トヨタ自動車、ホンダ、マツダ、スズキ、ヤマハ発動機の5社で、新たに自動車の安全試験の認証不正などが明らかになった。6月8日時点で生産・出荷停止となったのは、トヨタの「ヤリスクロス」など6モデルだが、トヨタは現在も調査を継続しており、いすゞ自動車など社内で不正の有無を調査中の会社もある。
今回は昨年12月にトヨタ子会社のダイハツが、長年にわたり、多くのモデルの認証試験で不正を行っていたことが発覚したのがきっかけだ。国土交通省は「型式指定」を取得している自動車メーカー、輸入事業者、部品メーカーに対し、過去10年間、認証試験を適正に行ったかを調べるよう指示し、これを受けた各社の社内調査で、今回の不正が発覚した。
認証不正を国交省に報告したのは、トヨタ、ホンダ、マツダ、スズキ、ヤマハ発動機の5社で、不正の対象は合計38モデル、累計出荷台数は500万台以上となる。ただし、対象モデルの多くはすでに生産終了しており、国交省は生産中の6モデルについて出荷を停止するよう指示した。
GDPへの影響も懸念
ダイハツの認証不正では、昨年12月下旬から全モデルの生産・出荷を停止したが、生産・出荷再開は5月だった。この影響でダイハツの2024年3月期は31年ぶりの営業赤字となり、さらに、裾野の広い自動車産業の特徴を表すかのように、24年1~3月期の日本の実質GDP(国内総生産)は、年率換算でマイナス1.8%となったが、これはダイハツの生産停止の影響が大きいとされている。
このため、今回の認証不正による日本経済へのマイナスの影響を懸念する声は強い。特に世界最大の自動車メーカーのトヨタは、グループのダイハツ、日野自動車、豊田自動織機のみならず、トヨタ本体でも不正が発覚した衝撃は大きい。さらに、燃費不正、完成検査不正など、日本の自動車メーカーで過去に相次いで発覚した不正事案に無縁だったホンダでも不正が発覚するなど、ある業界関係者は「影響は計り知れない」と危惧する。
ただし、調査が継続中の会社もあり、生産・出荷停止の規模や期間など、全容が固まっていないため、日本経済への具体的な影響度合いはつかみにくい。今回は、人気モデルのトヨタの「ヤリスクロス」が含まれるが、出荷停止は現時点で6モデルと比較的小規模だ。
問題は、日本車の品質に対する信頼を損ないかねない点だ。今回は、トヨタが目標数値にするためソフトを書き換えるといった悪質なケースや、試験回数を減らすために法規を勝手に解釈し、ルールと異なる方法で試験するなど、不正内容は多岐にわたる。
このため、5社は認証不正対象モデルは「安全性に問題はない」と説明するが、ユーザーから不安視する声が相次いでおり、対象モデルの中古車価格も下落している。日本は61カ国・1地域と自動車型式認証の相互承認をしており、日本で型式指定を取得すれば、簡単にこれら市場に輸出できる。培われてきた日本車ブランドが国内外で大きく失墜するのは避けられない状況だ。
(河村靖史・ジャーナリスト)
週刊エコノミスト2024年6月25日号掲載
FOCUS 自動車の認証不正 トヨタ本体など5社でも発覚 海外で日本ブランド失墜か=河村靖史