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2023年度エコノミスト賞の遠藤正寛・慶応大教授を表彰 「インクルーシブ」な輸入対策を考察 編集部

授賞式でスピーチする遠藤正寛氏
授賞式でスピーチする遠藤正寛氏

 第64回(2023年度)エコノミスト賞(毎日新聞社、毎日新聞出版主催、千葉商科大学協賛)の授賞式が5月30日、東京都千代田区の学士会館で開かれた。受賞作『輸入ショックの経済学 インクルーシブな貿易に向けて』(慶応義塾大学出版会)の著者の遠藤正寛・慶応義塾大学教授に、毎日新聞出版の小島明日奈社長から賞状と記念品、協賛の千葉商科大学の内田茂男理事長から賞金100万円の目録が贈られた。

 遠藤氏は1966年生まれ。埼玉県川口市出身。91年に慶応義塾大学商学部卒業後、同大学大学院商学研究科後期博士課程単位取得退学、2000年同大学博士(商学)。同大学商学部助教授を経て06年より現職を務める。

 中国などからの輸入に対しては、日本国内の雇用の減少や賃金の低下といったネガティブな側面が注目されることが多い。これに対し、『輸入ショックの経済学』は、負の影響を緩和する「インクルーシブ」(包容的)な輸入対策を、膨大な実証データに基づいて考察していることが高く評価された。

 遠藤氏は授賞式で「『面白い』という感覚が、私が研究を続けるモチベーションになってきた。私の研究が面白い、と感じていただけたからこそ、賞に選ばれたと思っており、今回の受賞は私の人生にとって大きな財産になる」と喜びを語った。

 さらに「この年齢になるまで研究が面白いと思い続けることができる環境を提供していただいた関係者に、心から日ごろの感謝の気持ちを伝えたい」と述べた。授賞式には、長年研究をサポートした阿部顕三・中央大学経済学部教授(大阪大学名誉教授)も駆けつけた。

 出版元の慶応義塾大学出版会の大野友寛社長は「『輸入ショックの経済学』は新聞の書評欄で掲載される機会がなく落胆していたが、受賞はまさに逆転ホームラン。出版を巡る環境は厳しいが、受賞を励みに今後も一層精進していく」と語った。

 選考委員長の井堀利宏・政策研究大学院大学名誉教授は「エコノミスト賞の選考基準は、研究の独創性、分析の確実性、一般読者も含めた啓蒙(けいもう)性──の三つがあるが、『輸入ショックの経済学』はこの三つを非常に高いレベルで満たしている。選考作業では、審査メンバーの意見が大きく異なることはなく、スムーズに進んだ」と評価した。

 毎日新聞社の松木健社長は「『週刊エコノミスト』はオンラインでも配信しており、皆様から評価されるようなコンテンツ作りに努めたい」と述べた。

 千葉商科大学の内田理事長は、同大学が2028年に創立100周年を迎えるに当たり「出版事業の創設を企画している。経済学の学術書を維持するため、出版文化の振興に貢献していきたい」と意気込みを語った。

 エコノミスト賞は1960年に創設。「経済論壇の芥川賞」とも言われ、日本や世界について実証的・理論分析的に優れた作品に授与される。

(編集部)


週刊エコノミスト2024年6月25日号掲載

FOCUS 第64回(2023年度)エコノミスト賞 遠藤正寛・慶応大教授を表彰 「包容的」な輸入対策を考察=編集部

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