電離層の観測が地震予知につながる可能性/186
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気象の変化は地球を取り巻く大気が作り出している。台風や豪雨など自然災害を未然に防ぐには、大気の構造を知る必要がある。大気は「対流圏」「成層圏」「中間圏」「熱圏」の4層構造からなり、地上からの距離によって性質が変化する。
高度11キロメートルまでの「対流圏」には地球の大気の全質量のうち約8割が含まれており、その名が示すように空気が上下に対流する。地表付近の大気には水分が多く含まれ、水が蒸発すると水蒸気となり上昇する。上空へ移動するにつれて雲を作り、その雲から雨を降らせて大量の水を循環させている。対流圏の気温は、太陽放射で加熱される地表付近で高く、高度が上がるほど低くなる。
次の高度11~50キロメートルまでが「成層圏」である。成層圏には水分はなく、対流圏のような上下の循環は起きず安定している。成層圏では対流圏とは逆に上空に行くほど温度が高くなる。成層圏の上で高度50~80キロメートルまでが「中間圏」である。ここでは高度とともに気温は低下する。成層圏と中間圏を合わせて「中層大気」と呼ばれる。
高度80~500キロメートルの層は「熱圏」である。高くなるほど大気は薄くなって気温が上昇し、高度200キロメートル以上では600度を超える。熱圏のうち高度100~300キロメートルにはイオン状態に電離した酸素や窒素が漂う「電離層」がある。ここは地上からの電波を反射する働きをするため、ラジオなどの通信に利用される。地上から発射された電波は、電離層と地上の間で反射しながら地球の裏側まで届く。
水が超臨界状態に
最近、この電離層の観測から地震予知に結びつく可能性のある研究が報告された。2011年の東日本大震災や16年の熊本地震など大地震の発生直前に、震源付近の電離層に異常が観測されたことがある。しかし、地震発生前になぜ異常が生じるかを説明する明確な物理モデルはなく、仮説がいくつか出されているのみ…
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週刊エコノミスト
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