緊急地震速報の空振りは「見逃し」防ぐためにも不可避/187
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石川県能登地方で6月3日午前6時31分に地震が発生し、輪島市や珠洲市で最大震度5強を観測した。地震の規模は速報値でマグニチュード(M)5.9だったが、地震波検知の5.3秒後に「富山湾を震源とするM7.4の地震」と推定し、東北から関東、近畿に至る広い範囲に緊急地震警報が響いた。
M7.4は1月1日に発生したM7.6の地震に匹敵する規模であり、筆者も能登半島沖の活断層がさらに割れたのかと緊張した。ただ、実際の地震の規模はM6.0(暫定値)で、一連の断層内での余震だった。いわゆる緊急地震速報の「空振り」だが、その仕組み上、空振りは避けようがないことを知っておく必要がある。
気象庁が出す緊急地震速報は、大きな揺れが来る数十秒ほど前に、テレビやラジオ、ネットや携帯電話などを通じて、地震が起きた場所(震源)の推定や大きな揺れが予想される地域を知らせる情報である。リアルタイムで伝達される情報は防災上、非常に重要で、自分の身を自分で守るためにも役に立つ。
地震が発生すると、その揺れは地中を地震波として伝わっていく。地震波には主に2種類あり、秒速約7キロメートルと速い「P波」と、秒速約4キロメートルと遅いものの揺れは強い「S波」である。各地に設置された地震計でP波のデータを検知した後、データを瞬時に解析して震源や揺れの大きさを推定し、S波の到達前に知らせる。
精度向上「不完全」
緊急地震速報は2007年10月から一般提供が始まり、気象庁は緊急地震速報の予測の精度を実際の観測結果と照らし合わせて検証している。11年の東日本大震災では、M9.0という巨大地震の発生により広範囲で地盤が不安定化し、離れた場所でほぼ同時に余震が起きたりしたため、精度が落ちることもあった。
緊急地震速報はその後、新たな予測手法の開発などにより精度を向上しているが、複数の観測データの分離が完全にはできておらず、結果とし…
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週刊エコノミスト
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