日本の活火山/6 薩摩硫黄島(鹿児島県) 完新世最大だった「アカホヤ噴火」/188
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鹿児島市の100キロメートル南にある鹿児島県の薩摩(さつま)硫黄島(いおうじま)は、東西6キロメートル、南北3キロメートルの火山島である。研究者などでつくる気象庁長官の私的諮問機関「火山噴火予知連絡会」が選定した「常時観測火山」の一つで、気象庁が地震計、空振計、傾斜計、全球測位衛星システム(GNSS)、監視カメラを設置し、24時間体制で観測を行っている。
薩摩硫黄島の主峰である硫黄岳は流紋岩質の成層火山で、山頂火口では絶えず噴気がある。有史以降にも噴火が周辺海域で起こり、2キロメートル東の沖合に新島(昭和硫黄島)が形成された。現在は火山性地震や火山性微動に特段の変化はないが、1日当たり1000トンの火山ガス(二酸化硫黄)の放出が続いており、夜間に火映が見られることもある。
「鬼界カルデラ」の縁
薩摩硫黄島は、7キロメートル東にある竹島とともに「鬼界(きかい)カルデラ」の縁にある。7300年前に大量のマグマが一気に噴き出し、地下の空洞部が落ち込んで東西23キロメートル、南北16キロメートルの陥没カルデラができた。これが「アカホヤ噴火」と呼ばれる巨大噴火であり、薩摩硫黄島は6000年前以降に鬼界カルデラの縁にあたる海面上に姿を現した。
近年、このアカホヤ噴火が完新世(1万1700年前~現在)で世界最大規模の噴火であることが判明した。神戸大学の研究グループが今年2月、周辺海域の堆積(たいせき)物を調査した結果として、海水と混ざった火山噴出物が40キロメートル以上も海底を移動し、4500平方キロメートルにわたって堆積していたことが分かったと発表した。この面積は京都府や山梨県に匹敵し、体積換算では71立方キロメートルになる。
さらに、上空にまき散らされた大量の火山灰を合計すると、アカホヤ噴火の噴出物の総量は332~457立方キロメートル以上と計算され、陸上・海底を含めて完新世最大の噴…
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週刊エコノミスト
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