オゾン層の今㊤ 減少止まっても少ない状態続く/189
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「オゾン」は大気中に薄い濃度で存在する気体である。地表からの高さ20~30キロメートルにオゾンが多く含まれる層があり、「オゾン層」と呼ばれている。オゾン層は太陽からやってくる有害な紫外線を吸収し、地上で暮らす生物を守っている。
オゾンは大気中にごくわずかしか含まれていない。地球の全大気を1気圧、0度として地上に集めると8キロメートルの厚さになるのに対し、オゾン層はたった3ミリメートルにしかならない。そして、南極上空では毎年8~12月ごろ、オゾンのほとんどない「オゾンホール」と呼ばれる部分が出現する。
世界のオゾン全量は1970~80年の平均値に対し、80年以降の10年間で約1.8%も減少した。90年代前半には5%以上となった時期もあったが、90年代後半以降は減少傾向が止まり、近年は増加傾向も見られる。ただ、現在の世界のオゾン全量は2%超少ない状態が続いている。
オゾンは3個の酸素原子からなる酸素の「同素体」である。大気中の酸素は、2個の原子が結合して1個の酸素分子(O₂)を作る。オゾンはもう一つ原子が結合した3原子の分子(O₃)で、酸化力や殺菌力があるため殺菌や脱臭、脱色などに使われる。
人工物のフロンが破壊
オゾンは大気の成層圏にある酸素分子に、太陽から来た紫外線が当たる際に作られ、オゾンが濃集した層がオゾン層となる。しかし、オゾンは不安定なため、紫外線などの刺激によって再び酸素分子(O₂)と酸素原子(O)に分離する。オゾン層ではこうした反応が絶えず起きており、オゾン濃度が一定に保たれる。
オゾン層を破壊したのはフロンやハロンなど人間が作り出した化学物質である。フロンは塩素、フッ素、炭素などを含む化合物で、容易に気化と液化を繰り返せる無害な物質である。冷蔵庫やエアコンの冷媒、スプレーの発泡剤、電子部品洗浄用などにも大量に使われてきた。薬品や熱でも分解しにくい安定した性質を持…
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週刊エコノミスト
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