教養・歴史 鎌田浩毅の役に立つ地学

オゾン層の今㊦ フロン規制継続で40年後に回復へ/190

「オゾンホール」は南極上空のオゾン量が極端に少なくなる現象で、地表からの高さ20~30キロメートルの成層圏にあるオゾン層が、穴の開いたような状態にあることから名付けられた。これによって生物に有害な紫外線をオゾンが吸収することができなくなり、紫外線が地上に届いて悪影響を及ぼす懸念がある。

 紫外線には三つの種類があり、波長の長いものから短いものへA、B、Cに分けられる。肌のしみの原因になるA紫外線、日焼けのひどい状態を起こすB紫外線、もっとも強い障害が出るC紫外線である。

 地上にはAとBの紫外線が降り注いでおり、生物の遺伝をつかさどるDNAはB紫外線によって損傷を受ける。具体的には、DNAに欠損ができると皮膚がんや白内障を引き起こす確率が高まる。C紫外線は標高が高い山頂では確認されているが、オゾン層によって遮断されている。DNAの破壊を守ることは生命にとって至上命令であり、オゾン層の破壊が進むとC紫外線が地上の生命に悪影響を及ぼす可能性がある。

 オゾンホールは南半球の冬から春に当たる8~9月に発生し、11~12月に消滅する季節変化が衛星によって1980年代から観測されている。2023年のオゾンホールは南極上空で8月上旬に現れたのち、9月21日に年最大(2590万平方キロメートル)となった。これは南極大陸の面積の1.9倍に当たる(図)。

 1970年代に人間の作り出した化学物質フロンがオゾン層を破壊する可能性が指摘され、80年代に入って気象庁の研究官が世界で初めて南極オゾンホールを発見。フロンの生産は87年9月に採択されたモントリオール議定書によって全世界で禁止された。日本では01年4月から家電リサイクル法により廃棄された電化製品からのフロンの回収が義務づけられている。

生物の進化にも貢献

 国連環境計画と世界気象機関は23年1月、このままフロンガス規制が続きオゾン層の回復が進めば、オ…

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週刊エコノミスト

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