双鴻科技 ノートPC用冷却機器の最大手 富岡浩司
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Auras Technology 減収続くも株価は好調/117
双鴻科技(オーラス・テクノロジー)はコンピューターなどの電子機器を冷却する「冷却モジュール」という電子部品を設計・製造する台湾企業だ。
1998年の創業から間もなく、冷却モジュールメーカーの超衆科技を辞めたばかりの20代の青年、林育申氏(現董事長)が経営を引き継いだ。2021年に取材に応じた台湾主要週刊誌『今周刊』の記事によれば、同氏はノートパソコン向けの冷却モジュールに注力すると決め、台湾の広達電脳(クアンタ)や韓国のサムスン電子向けに製造を始めた。
株価が6カ月で2・7倍
好調な業績が続き、02年に顧客メーカーの生産拠点に近い中国中部の江蘇省昆山市に工場を設けた。創業からわずか8年後の05年には、新興企業株を主に取り扱う「タイペイエクスチェンジ(TPEx)」に上場している。
その後、冷却モジュールの用途をグラフィックスカード(コンピューターの画像処理を高性能化する基板)、スマートフォン、サーバーなどに広げ、中国の広東省広州市、重慶市、安徽省合肥市に工場を増設した。20年には中国から他国に生産拠点を移す顧客の要望に応じてタイ中部サムットプラカン県にも工場を設けた。22年には自動車用の冷却モジュール、昨年から液冷式を本格投入している。
同社ウェブサイトによると、ノートパソコン用冷却モジュールの設計・製造で世界最大手という。23年売上高に占める用途別構成比はノートパソコン36%▽グラフィックスカード26%▽サーバー23%▽デスクトップコンピューター10%▽その他5%──だった。主な顧客には台湾の広達電脳、英業達(インベンテック)、緯創資通(ウィストロン)、鴻海科技集団(フォックスコン)のほか、米デルやサムスン電子など名だたる企業が名を連ねる。
23年売上高は前年比8・3%減の127億台湾ドル(約610億円)となり、2年連続で減収だった。一方、株価は23年末の352.5台湾ドル(約1692円)から今年5月29日の955台湾ドル(約4584円)へと2.7倍にはね上がった。人工知能(AI)の計算をするサーバー向けの冷却モジュールに市場の期待が高いことを反映していると見られる。
パソコンやスマホ向けの冷却モジュールには、微細なパイプの中に揮発性の高い液体を詰めて機器が発する熱を吸収して冷却する「ヒートパイプ」などがある。技術の進化により、最近は冷却ファンを搭載しない薄型のノートパソコンも出現した。
サーバーを設置するデータセンター用は空冷式と液冷式に大別できる。空冷式を使う場合、データセンターの建物全体を巨大な…
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週刊エコノミスト
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