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経産省の次世代航空機開発 川崎重は三菱重よりも前向き 平野純一・編集部

試験飛行のため名古屋空港を離陸するスペースジェット試験10号機=2020年3月18日
試験飛行のため名古屋空港を離陸するスペースジェット試験10号機=2020年3月18日

 日本初のジェット旅客機の開発断念から1年。再び旅客機開発の構想が浮上した。企業の反応はどうなのか。

目指すは100~200席クラスのカーボンニュートラル機

 スペースジェット(旧MRJ)で失敗した日本の民間旅客機開発が再び動き出す。

 経済産業省は3月、産業構造審議会・航空機産業小委員会の「航空機産業戦略」で、2035年ごろをめどに日本が次世代航空機開発を目指す方針を示した。

 スペースジェットは三菱重工業1社で開発したが、今回はその失敗も踏まえ、複数社の参加を前提に、旅客機製造に再びチャレンジする。

 同戦略では「スペースジェットの教訓を生かす」としており、本格的に開発に乗り出すとしたら三菱重工の参加は欠かせない。もう1社、大きな期待がかかるのは川崎重工業だ。同社は防衛省向けの対潜哨戒機や輸送機を製造する実績がある。日本で航空機製造にかかわる社は多くあるが、プロジェクトが具体的に動き出すとしたら、やはり三菱重工と川崎重工がメインになるだろう。

 川崎重工は海上自衛隊のP1対潜哨戒機を13年から33機製造。航空自衛隊にはC1輸送機を31機製造(1970〜81年)し、後継のC2輸送機も16年から15機納めている。川崎重工の橋本康彦社長は、5月9日の24年3月期決算会見で、経産省の構想への対応を問われると「我々は防衛機で完成機事業の実績がある。何らかの事業が始まるのなら前向きに考えたい。完成機事業をやっていることで幅広いサプライヤー(部品供給メーカー)との関係もある」と話し、前向きな姿勢を示した。

 一方の三菱重工は、スペースジェット失敗の傷がまだ癒えないのか、泉沢清次社長の発言は慎重だ。

 5月8日の24年3月決算会見で、次世代航空機開発について問われると、「航空宇宙事業は当社の重要な事業だが、まだ経産省の大きな方針が出た段階。今後の進み具合を見ながら適切に対応していく」と述べるにとどめた…

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