テクノロジー

MRJの夢を再び 5兆円かけ次世代旅客機開発へ 平野純一

試験飛行で名古屋空港を離陸するスペースジェット=2020年3月18日、兵藤公治撮影
試験飛行で名古屋空港を離陸するスペースジェット=2020年3月18日、兵藤公治撮影

 国産初のジェット旅客機を目指し三菱重工業が開発していたスペースジェット(旧MRJ)。航空当局が安全性のお墨付きを与える型式証明(TC)を取ることができず、2023年2月に開発を断念した。

 あれから1年。日本は再び民間航空機開発にチャレンジすることを決めた。経済産業省は3月27日、産業構造審議会・航空機産業小委員会「航空機産業戦略」で、2035年をメドに官民で新しい国産旅客機を開発する方針を示した。

 スペースジェットは三菱重工1社で開発し、約1兆円の資金を投入した。その重い開発費負担に最後は耐えられなくなったこともあり、今回は複数の航空機・部品メーカーなどが共同で開発を目指す。官民合わせて5兆円を投入する計画だ。

 新しい飛行機は時代の要請に合わせたものにする構想だ。国際民間航空機関(ICAO)は2050年までに、国際線航空機の二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロとする目標を掲げている。これに対応するには、燃料にSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)を使う、もしくは水素燃料の航空機を開発するなどが考えられるが、これらを視野に入れながら開発を行う。

100数十席クラスを目指す

 では、どのような機体の開発を目指すのか。審議会で示されたのは「単通路機」の開発だ。

 単通路機とは機体の真ん中に通路が1本ある機体のこと。スペースジェットも単通路機で通路を挟んで左右に2席ずつあるレイアウトだった。ただ、スペースジェットは90席程度で、地方路線向きに開発された機体だった。旧称MRJの「R」は「regional、地方の」の意味。主要空港間ではなく、主要空港で乗り換えて地方に向かう路線での使用を想定していた。

 関係者によると、今回開発を目指すのは、同じ単通路機でも一回り大きい100数十席クラスを構想しているようだ。このクラスの機体で、今後最も成長が見込まれる…

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週刊エコノミスト

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