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パリ市立近代+東京国立近代+大阪中之島の3美術館が持ち寄った“豊かなリソース” 石川健次

アメデオ・モディリアーニ《髪をほどいた横たわる裸婦》1917年 大阪中之島美術館(トリオ、テーマ〈モデルたちのパワー〉より)
アメデオ・モディリアーニ《髪をほどいた横たわる裸婦》1917年 大阪中之島美術館(トリオ、テーマ〈モデルたちのパワー〉より)

美術 TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション

 引き伸ばされたような細長い顔とアーモンド形の目、とくればピンとくる人は少なくないだろう。イタリアで生まれ、20世紀前半のパリを彩ったエコール・ド・パリの代表的な画家、アメデオ・モディリアーニ(1884~1920年)が描いた人物画の特徴だ。図版に挙げた作品からも、そうした特徴は明らかだろう。

 さらに言えば、余計な細部を切り捨てた大胆な形態把握と、おそらくそのせいもあるのだろう、いっそう優美で柔らかな印象が強調されているようにも感じる。

 コロナ禍に世界が揺れたとき、美術館の休館や展覧会の延期、中止が相次いだ。人やモノの移動が制限され、国内外から作品を借用して開く展覧会の開催が困難となった状況で、にわかにクローズアップされたのが、各館が所蔵する豊かなコレクションだ。

 他所から借りられないなら自前でとばかりに、各館が地道に積み上げてきた成果、いわば“豊かなリソース”を改めて見直し、より有効に活用する機会に皮肉にもコロナ禍がなったといえるだろうか。

 さまざまなテーマのもと、各館のコレクションからテーマごとにそれぞれ1点ずつ選んでトリオで展示するという本展は、出品しているパリ市立近代美術館、東京国立近代美術館、大阪中之島美術館それぞれの“豊かなリソース”あってこその企画だろう。

 なかでも「モデルたちのパワー」をテーマに並んだ3点、つまり図版の作品のほか西洋近代絵画の巨匠、アンリ・マティスの《椅子にもたれるオダリスク》、近代日本の代表的な画家、というよりも日本における前衛絵画の先駆として名高い萬(よろず)鉄五郎が東京美術学校(現東…

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