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英総選挙で大敗予想の保守党はEU離脱の“最後の犠牲者” 木村正人

落選危機のスナク英首相(2024年6月、ロンドン)(Bloomberg)
落選危機のスナク英首相(2024年6月、ロンドン)(Bloomberg)

 7月4日投開票の英国総選挙(定数650)で、前身のトーリー党にさかのぼると350年近い伝統を誇る与党・保守党が歴史的大敗に向け突き進んでいる。

 保守系英紙『デーリー・テレグラフ』紙(電子版、6月19日付)と英調査会社サバンタの世論調査では最大野党・労働党が516議席を獲得し、スナク首相は議席を失うと予想される。現職首相が落選するとしたら英国政治史上初めての異常事態である。

 前回2019年の総選挙で、欧州連合(EU)離脱を主導したボリス・ジョンソン首相(当時)に率いられた保守党は365議席と地滑り的勝利を収めたが、同予想によると今回は6分の1以下の53議席に落ち込む。他の世論調査はここまでひどくないものの、保守党の歴史的大敗はもはや不可避の情勢だ。

 英紙『タイムズ』(電子版、6月13日付)と英調査会社ユーガブの世論調査ではEU離脱のもう一人の立役者であるファラージ氏の新党「リフォームUK(改革英国)」の支持率が19%となり、わずか1ポイントとはいえ初めて保守党を上回った。

 第二次世界大戦を勝利に導いたチャーチル、「英国病」を断ち切るため大なたをふるったサッチャーに代表されるように英国のかたちを作ってきたのは保守党である。それがEU離脱の破綻、コロナ危機、エネルギー危機、インフレ、「生活費の危機」の連鎖に巻き込まれ、死の際に追い込まれている。

社会を分断したツケ

 16年にEU残留・離脱を問う国民投票を実施し、パンドラの箱を開けてしまったキャメロン外相(当時首相)はタイムズ(電子版、6月14日付)のインタビューで「ファラージは保守党を破壊しようとしている。扇動的な言葉と“犬笛政治”は…

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