エアロバイロンメント 軍用ドローンのパイオニア 岩田太郎
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AeroVironment 自爆ドローンが前期比60%増収/121
エアロバイロンメントはドローン(無人航空機)を主力製品とする米軍需大手だ。
創業者のポール・マクレディは第二次世界大戦中に米海軍飛行士官候補生として操縦訓練を受けた後、グライダー(滑空機)にのめり込んで数々の大会で優勝。米カリフォルニア工科大学の大学院博士課程で航空工学を学んでいた1951年、気象調査会社を設立した。退職後の71年に創業したのがエアロバイロンメントだ。
80年代に軍用ドローン
カリフォルニア工科大が生前のマクレディから聞き取った証言によると、創業からしばらくは人力飛行機の開発に注力して英仏海峡の横断飛行に成功したのに続き、太陽電池と燃料電池を電源とするドローンの開発を米国防総省から受注した。レーガン大統領が83年に打ち出した「スターウォーズ計画(戦略防衛構想)」の一環で、敵のミサイルを迎撃するドローンの開発を目指したという(同構想はのち頓挫)。
86年には人が投てきして発進する小型ドローン「FQM151Aポインター」を米海兵隊向けに開発した。装備するカメラで地上を撮影し、映像を操作手に送信する偵察機だ。国防総省国防技術情報センターの資料によれば、米軍は91年の湾岸戦争と2003年のイラク戦争でポインターを使った。同年、全長0.9メートル、全幅1.4メートルと小型の後継機種「RQ11レイブン」を米陸軍から受注。同社は07年、米ナスダック証券取引所に上場している。
24年4月期売上高は前年同期比33%増の7億1672万ドル(約1132億円)。事業セグメント別構成比はドローンを含む「無人システム」62%、「徘徊(はいかい)爆薬」27%、マクレディ研究所11%だった。ただし、前年同期比はそれぞれ30%増、60%増、0.2%増となり、徘徊爆薬の伸びが著しかった。
徘徊爆薬は長時間滞空して攻撃標的を発見すると、遠隔指令を受けて突入・自爆するいわゆる「自爆ドローン」のことだ。同社は米陸軍の依頼を受けて開発し、12年に「スイッチブレード300」を引き渡した。国防総省は22年5月、ロシアの侵略を受けるウクライナにスイッチブレード700基以上を供給したと発表した。
後継機種はスイッチブレード600だ。ワヒド・ナワビ最高経営責任者(CEO)は今年6月26日の決算説明会で、「つい最近、米陸軍にスイッチブレード600の初回納入を済ませた」と説明した。24年4月期の徘徊爆薬セグメント売上高1億9258万ドル(約304億円)の62%は600型、残りは主に300型によるという。69年生まれのナワビCEOはアフガニ…
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週刊エコノミスト
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