教養・歴史 書評

ここまで違う日仏の学校 ママ記者が驚きの報告 楊逸

×月×日

 礼儀正しい、ルールをきちんと守って行動するという日本人像に感服するいっぽう、なぜ皆がそうできるかを不思議に思うのはおそらく私だけじゃないだろう。

 息子が東京の公立小学校に上がるのをきっかけにフランス人ママが体験する日本の教育事情をつづった本──『フランス人記者、日本の学校に驚く』(西村カリン著、大和書房、1760円)を読む。

 日本の小学校では、「小学校に上がる大分前から入学準備を始め説明会も受けなければならず、正装して入学式に参加する」「デジタル時代の今でも算数ドリルから保護者への連絡事項まで何でも紙プリントを使っている」「給食は味が良く健康的」「先生が違っても、公開授業(算数)では、『黒板に書いてあった引き算の例も解決する方法も、全クラスまったく同じ。教科書の開いたページも同じだ』」「どの小学校も体育館とプールが完備されているし、『プロのオーケストラ顔負けのあらゆる楽器がそろっている』音楽室もある」

 これら、日本の小学校に対する著者の率直な驚きの数々がこの本には多数書かれている。

 いっぽう、著者の母国であるフランスの小学校では、入学式がなく、親が学校に行くこともない。給食があってもまずかったり、ロスも多いらしい。水泳の授業をする時には、市民プールを借りて行わなければならない……。

 そのうえで著者は、「フランスの教育の強みは、アドリブのできる人を育てること」だという。「アドリブ」とはつまり「議論する能力」。そういう能力の欠如は記者会見に臨む日本の大臣が官僚の助けなしでは質問に答えられない場面や、NHKの「日曜討論」番組などにうかがえるらしい。

「学校は議論を教育の基礎にしなければならない。なぜなら『代表制民主主義』の制度は、効果的な議論を通じてのみ命を帯びる。『議論の仕方を知る』ことは教育における重要なスキルである」というのがフランスという国、フランス人の考えであり…

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週刊エコノミスト

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