中国にも女性の昇進を阻む「ガラスの天井」が存在する 菱田雅晴
ジェンダーギャップ(GG)指数とは各国の男女格差の状況を数値化したもので、スイスの非営利財団、世界経済フォーラムが毎年発表している。その最新版によれば、日本は146カ国中118位で、過去最低の125位だった昨年から若干持ち直した。しかしG7(主要7カ国)中でも最下位の日本は年々下落傾向で、アジア諸国中でも、韓国(94位)、中国(106位)の後塵(こうじん)を拝している。GG指数は政治、経済、教育、保健の4分野のスコアから算出されるが、日本の場合、識字率の男女比こそ1位だが、政治、経済分野の順位がそれぞれ113位、120位と低いことが響いている。
中国は「婦女能頂半辺天(=女性が天の半分を支える)」という表現で知られるが、GG指数では日本を若干上回るに過ぎない。1995年第4回世界女性会議で、女性の貧困や教育など12の重大問題領域の目標を掲げた「北京行動綱領」を採択、各国の女性政策の推進を強力にプッシュしたはずの中国の女性のエンパワーメントは今どうなっているのか。
その一端は、各分野の女性比率を収録した国家統計局編『2023中国婦女児童状況統計資料』(中国統計出版社)でうかがうことができる。
中国科学院における院士とは学術界最高の称号だが、女性院士は6.64%にとどまる。研究開発部門では25.9%と4分の1に達し、うち医薬科学部門(55.2%)、人文社会科学(47.6%)は比較的高い。全国規模の学会組織の女性会員シェアは29.7%に達するものの、理事では15.1%と依然男性が中心だ。女性律師(=弁護士)は36.4%と3分の1に及ぶ。社会組織面への進出では居民委主任(41.4%)、村民委主任(11.1%)と農村都市間の差異も目立つ。その他、人民検察院の刑事犯における女性比率は10.6%だが、伝播(でんぱ)性病罪(80.1%)、迷信利用の法律破壊(72.8%)は女性犯が圧倒的に多い。
とまれ、中国憲法は政治の男女平等をうたうものの、中央委員会205人中女性委員は11人と5%どまり、中央政治局員および最高指導部の政治局常務委員に女性はゼロだ。少なくとも中国の政治分野には女性の昇進を阻む「ガラスの天井」が依然として確実に存在している。
(菱田雅晴・法政大学名誉教授)
この欄は「永江朗の出版業界事情」と隔週で掲載します。
週刊エコノミスト2024年8月13・20日合併号掲載
海外出版事情 中国 依然、女性の昇進を阻む「ガラスの天井」=菱田雅晴