教養・歴史 小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

動物愛護の気持ちから肉食をためらいます/217

エマヌエーレ・コッチャ(1976年~)。イタリア出身のフランスの哲学者。中世哲学研究を皮切りに、新たなエコロジーを展開する。著書に『植物の生の哲学』などがある。(イラスト:いご昭二)
エマヌエーレ・コッチャ(1976年~)。イタリア出身のフランスの哲学者。中世哲学研究を皮切りに、新たなエコロジーを展開する。著書に『植物の生の哲学』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 動物愛護の気持ちから肉食をためらいます 私は動物が好きでペットをかわいがっていますが、菜食主義者の知人から矛盾しているのではと非難されました。以来、人間である自分が傲慢に思えて、肉食をためらうようになっています。どう心を整理すればいいでしょうか。(自営業・30代女性)

A 生をつなぐ「再受肉」という行為で、何ものも死なない世界が実現します

 私も動物を愛していますが、同時にお肉が大好物です。たしかに一見矛盾しているかのようです。改めてその部分を突かれると、きっと多くの人は考え込んでしまうでしょう。なぜなら、普段私たちはその事実に向き合おうとしていないからです。

 そこで参考になるのが、イタリア出身のフランスの哲学者エマヌエーレ・コッチャの思想です。

 彼によると、そもそも私たち人間は、他の生とつながった「一つの同じ生」だといいます。なぜなら、誰もが親の身体の一部を受け継いで生まれてくるわけですし、その親もまた先祖の一部を受け継いでいるのですから。

 その意味で、あらゆる生き物はイモムシがチョウになるのと同じように、同じ生がその都度別の身体に宿っている状態にすぎないというわけです。これを「メタモルフォーゼ」と呼びます。もともとは変態と訳されるドイツ語ですが、コッチャはこれを独自の哲学概念として論じているのです。

形を変えて生き続ける

 そんなメタモルフォーゼは、彼が「再受肉」と呼ぶ行為、つまり他の生を食べることで実現されるといいます。生き物は、他の生を食べることで生き延びると同時に、その生を受け継いでもいるのです。言い方を換えると、食べられた生は、他の生の中で形を変えて生きているということ…

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