首都直下地震の経済被害1001兆円を“事前復興”で減らす/192
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3800万人を直撃する首都直下地震が警戒されている。政府の地震調査委員会は今後30年以内にマグニチュード(M)7クラスの大地震が発生する確率を70%程度としている。それを受け、土木学会が今年3月、首都直下地震が起きた場合に復興するまでの長期的な経済と資産の被害が、総額1001兆円に上るとの推計を発表した。2018年には778兆円としていたが、その後の研究成果を踏まえて3割近く上方修正した。
1001兆円の内訳は、国内総生産(GDP)の損失を表す経済被害が954兆円、また被災した建物などの被害額を表す資産被害が47兆円である。経済被害は具体的には道路・港湾・生産設備の長期的な損壊による被害である。このほか、国や自治体の財政収支の悪化を表す「財政的被害」の389兆円が生じると推計した。具体的には、発災後の復興費353兆円と税収減36兆円を合わせた財政赤字の増加を意味する。
内閣府はこれまで、首都直下地震による犠牲者を最大2万3000人、経済被害を95兆円と推計してきた。これに対して、土木学会の推計は20年間の長期的な経済への被害も算出したもので、大きな開きが出ている。さらに、首都圏では加速する人口集中と劣化するインフラによる被害の増加も問題になっている(本連載の第152回を参照)。
ちなみに、土木学会は18年、南海トラフ巨大地震による20年間の経済被害総額を1410兆円と報告していたが(内閣府は220兆円)、こちらも今後、新しいデータに基づいて見直しを行う予定という。
耐震化と堤防建設
こうした経済被害を減らす対策として、道路・港湾の耐震化や堤防建設を行うことによって、首都直下地震で4割、高潮で2~7割、洪水で10割減らすことができると土木学会は提言した。具体的には、道路網の整備、電柱の地中埋設化、建造物や港湾の耐震化などの公共インフラ整備に21兆円以上を投じることで、経済被害…
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週刊エコノミスト
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