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教養・歴史 小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

痛ましい児童虐待事件の解決法/219

アンソニー・ギデンズ(1938年~)。イギリスの社会学者。ブレア政権のブレーンとして「第三の道」を提唱した。著書に『第三の道』などがある。(イラスト:いご昭二)
アンソニー・ギデンズ(1938年~)。イギリスの社会学者。ブレア政権のブレーンとして「第三の道」を提唱した。著書に『第三の道』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 痛ましい児童虐待事件の解決策はないものでしょうか 近年、自分の子どもを死に至らしめるなど、目を覆いたくなるような児童虐待事件が後を絶ちません。いったいどうすればこういう痛ましい事件がなくなるのでしょうか?(団体職員・40代女性)

A「存在論的安心」を形成した人を増やすため、社会投資としての育児支援を急ごう

 児童虐待事件は年々増えています。しかも残虐性も増しているように思えてなりません。とはいえ、家庭内で起こることは外部からの介入が難しく、行政も手をこまねいているのが現状です。どうすればいいのか。そこで参考にしたいのは、イギリスの社会学者アンソニー・ギデンズによる社会の在り方に関する思想です。

 かつてギデンズは、新しい社会民主主義のモデルである「第三の道」を掲げ、実際に労働党のブレーンとしてイギリスの政治に影響を与えたことで知られています。したがってその根幹は、福祉制度の充実にあったといっていいでしょう。

 とりわけ社会が連帯するためには、市民社会の基本単位である家族が重要であるとして、家族政策の重要性を訴えました。もともとギデンズは、一人ひとりの人間の基礎として存在論的安心が必要だと考えていました。

 これは自己のアイデンティティーの連続性や社会的、物質的環境の安定性に対して抱く信頼のことです。そしてその信頼の源泉は、乳幼児期の適切な養育環境の下で培われた基本的信頼にあるといいます。

親の生活安定策に介入を

 重要なのは、こうした存在論的安心をしっかりと形成した人間こそが、市民社会の担い手として社会の連帯を実現しうるという発想です。だからこそ、国家が社会投資としてしっかりと育児支援を…

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