真の主役は実際のスタントマンたち 映画愛あふれるアクション快作 勝田友巳
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映画 フォールガイ
スタントマンが主役の映画は、傑作でなくとも憎めない。たいてい主人公がトラブルに巻き込まれ、運動能力と撮影現場で培った経験と技術を駆使して危地を切り抜ける。そしてアクション。意外性のない物語をアクションで盛り上げるからB級感はぬぐえなくても、撮影現場と映画への愛情が感じられる。そんなスタントマン映画の中でも、「フォールガイ」は生身のアクションやスペクタクルへの破格の思い入れが伝わって、水際だった一作となった。
手だれのスタントマン、コルト・シーバースが、撮影中の大けがから現場に復帰する。元恋人ジョディの初監督作で、コルトは復縁を期して奮闘するのだが、その最中に彼の宿泊先の部屋で他殺体が発見された。コルトは何者かにぬれ衣を着せられ、命を狙われることになる。
仕掛けられた陰謀もジョディとのロマンスも、展開は予想通り。しかしスタントマン出身のデビッド・リーチ監督にとって、そんな物語はむしろ添え物。普通の映画なら“アクションは物語のためにある”というところだが、この映画では逆転、リーチ監督はスタント場面を生かすために、物語を語るのだ。
まずサイズがでかい。車が横転するとか港でジャンプしたボートが爆発炎上するとか、一つ一つは見たことがあっても、車は8回半も回転するし、ボートは高々と24メートルもふっ飛んでいく。すごいものを見せてやるという気合がビシビシ伝わって、拍手したくなるほど豪快だ。
主演にライアン・ゴズリング、相手役はエミリー・ブラントとオスカー級のスターを並べ、画面を華やかに彩る。バックステージものらしい小ネタも楽しい。ジョディはコルトに、火だるまになって壁に激…
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週刊エコノミスト
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