設立75年のNATO 脱“米国一極”にどう対応 平田智之
有料記事
節目の75周年となるNATO(北大西洋条約機構)首脳会議がワシントンDCで開催された。当地での首脳会議開催は実に25年ぶりとなる。新規加盟のスウェーデンを含めた32の加盟国とウクライナのほか、日本、韓国、ニュージーランド、オーストラリアのインド太平洋4カ国(IP4)も招待された。開催期間中は要人往来のため各所で道路が封鎖され、市内は渋滞した。
共同宣言では、集団安全保障を約する北大西洋条約第5条への不動のコミットメント(関与)がうたわれ、核抑止を含む抑止・防衛力強化が強調された。防衛費については、加盟国の3分の2がGDP(国内総生産)の2%という年間国防支出目標を達成したことを称賛しつつ、引き続き2%以上の支出が必要であることが確認された。その他、ウクライナ紛争が継続する中での重要なサプライチェーンの確保といった防衛産業協力の強化や、新たな人工知能・量子戦略による技術革新の加速などの必要性が確認されている。
他方、ウクライナ支援については、サミット開催中にロシアがキーウの小児病院を含むウクライナ各地を攻撃したことでNATOの役割が改めて注目された。しかしながら、来年までに最低400億ユーロ(約7兆円)の拠出に合意し、ウクライナがNATO加盟への「不可逆的な道」を歩むことへの支援は約束されたものの、5年以上の複数年にわたる支援は合意されず、米国製ミサイルのロシア領土攻撃も引き続き認められなかった。ウクライナのNATO加盟への正式招待も見送られ、希望と失望が入り乱れる結果となった。
見方を変えれば、ウクライナ支援に懐疑的な国が増える中、バイデン大統領が重視していた伝統的な「大西洋…
残り711文字(全文1411文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める