経済悲観論を封じる「中国経済光明論」の大号令 目立った効果はいまだなく 岸田英明
「中国経済光明論」とは文字通り、「中国経済の未来は明るい」と見る論だ。2023年12月に中国共産党の中央経済工作会議で言及されて以降、党指導部は折に触れ「光明論を響かせよ」というメッセージを打ち出している。直近では7月末の重要会議で習近平総書記がたて続けに言及した。長引く不動産不況や個人消費の弱含み、貿易や技術を巡る米中間の摩擦など、中国経済が困難に直面する中、光明論を通じて、経済政策を担う党員・党幹部らに自信を抱かせるとともに、中国の家計や内外の企業、投資家らのマインドを改善させる狙いがある。
党の思想ブレーンである王滬寧・中央政治局常務委員は光明論について、1月に開かれた全国政治協商会議委員向けの会合で次のように語っている。少し長いが、指導部の意図を理解する上で重要な説明であるため全て引用する。
「……経済運営と世論伝搬の規律を把握し、党中央の大政方針と経済政策を宣伝・説明し、我が国の経済発展の形勢を全面的かつ弁証法的、長期的に捉え、発展への信頼を高め、社会の期待を安定的に改善し、中国経済光明論を響かせよ」──。つまり、指導部が伝えたいのは、光明論は決して結論ありきの「ためにする議論」ではなく、中国経済の実態を正しく捉えれば必然的に導かれる結論である、ということなのだろう。
実践面では二つのアプローチが確認できる。一つは中国経済のポジティブな点をアピールすることで、二つ目は経済の先行きに対するネガティブな言説を封じる、またはそれに対抗することだ。ポジティブな点としては、巨大な人口や豊富な人材、広範な産業の集積、新技術に対する消費者の高い許容度などのアピールが多い。
“不適切”言…
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週刊エコノミスト
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