夏の英国で起きた反移民暴動は「人が来るたび拳が飛び交った」伝統をSNSが助長したのか 木村正人
有料記事
英イングランド北西部サウスポートで7月29日、ダンスクラスに参加していた3人の少女が17歳の少年に刺殺される事件が発生し、その後、6日間にわたって英国各地で極右とネオナチによる反移民暴動が吹き荒れた。
逮捕された少年の両親はルワンダ出身。極右やネオナチはSNS(交流サイト)で「犯人はイスラム系」「不法移民だ」とデマをまき散らした。現場を訪れたスターマー首相には「あと何人、子どもが殺されたら済むんだ」などと罵声が浴びせられた。
英歴史家ロバート・ウィンダー氏は英紙『ガーディアン』(電子版、8月10日付)に「英国の暴動と人種的前進の歴史を振り返れば、それが私たちなのだ」と寄稿した。
同氏によると、1190年、イングランド北部ヨークのユダヤ人が城に押し込められて殺される事件が発生。1263年にはロンドンで起きた暴動で400人が死亡した。1517年のメーデー(五月祭)前夜には、ロンドンで1000人の暴徒が外国人に見える人を片っ端から襲撃した。
移民の新たな流入は人種的な摩擦と衝突のリスクを高める。英国の欧州連合離脱によってフランスの協力が得られなくなり、小型ボートで難民が英仏海峡を毎日のように渡ってくる。ボート難民は2022年に4万5755人を記録し、今年もそれと同じペースで英国に漂着している。
前保守党政権が難民認定を大幅に滞留させた結果、英国全土で約400カ所のホテルが難民申請者の宿泊施設として利用されている。そうした難民ホテルが今回の反移民暴動のターゲットにもなった。
ウィンダー氏は「人が来るたび拳(暴力)が飛び交った」と英国の歴史を振り返る一方で「差別主義者の暴動は、それに対…
残り726文字(全文1426文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める