“欧州の病人”ドイツの容体をこじらせるEV不振 自動車部品業界を覆うリストラの波 熊谷徹
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ドイツの景気後退に加えて、内燃機関から電気自動車(EV)に転換が進む「モビリティー転換」が雇用を直撃している。『南ドイツ新聞(SZ)』は7月26日付電子版で「自動車部品大手ZFは、2028年末までにドイツの従業員数を最大1万4000人減らす」と報じた。ドイツの従業員数5万4000人のほぼ4人に1人にあたる。ZFのクライン社長は、「会社の将来を考えて、今行動しなくてはならない」と述べ、早期退職勧奨だけではなく、工場閉鎖や解雇の可能性も示唆した。
SZは人員削減の理由として、モビリティー転換を挙げた。同紙は「EVシフトの影響で、内燃機関の車の部品への需要が減少した。ZFは、EV需要の増加を見込んで多額の投資を行ったが、ドイツなど欧州諸国ではEV需要が冷え込んでいるため、生産能力が過剰になった」と分析する。
報道機関や労働組合によると、ZF以外にも、ヘラー、ベバストなどの部品メーカーが合計1万人超の人員削減を検討。ある企業コンサルタントのアンケートによると回答企業の60%が人員削減を計画中だ。
ドイツの『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』は8月5日電子版で「ドイツのコンチネンタルは、25年末までに、収益性が低い自動車部品部門をスピンオフし、収益性が高いタイヤ事業に専念する」と報じた。経済紙『ハンデルスブラット』は8月6日付電子版で、「コンチネンタルは、これまで数十億ユーロを投資して、センサーやブレーキなど自動車部品部門を拡充してきた。今回同社がこの部門の分離を打ち出したことは、経営陣の過去の戦略が間違っていたことを示しており、敗北と呼ぶべきだ」と論評した。同国では「タイヤ事…
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週刊エコノミスト
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