新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

経済・企業 論壇・論調

“欧州の病人”ドイツの容体をこじらせるEV不振 自動車部品業界を覆うリストラの波 熊谷徹

独自動車部品大手コンチネンタルのセッツアー最高経営責任者(2023年6月、フランクフルト) Bloomberg
独自動車部品大手コンチネンタルのセッツアー最高経営責任者(2023年6月、フランクフルト) Bloomberg

 ドイツの景気後退に加えて、内燃機関から電気自動車(EV)に転換が進む「モビリティー転換」が雇用を直撃している。『南ドイツ新聞(SZ)』は7月26日付電子版で「自動車部品大手ZFは、2028年末までにドイツの従業員数を最大1万4000人減らす」と報じた。ドイツの従業員数5万4000人のほぼ4人に1人にあたる。ZFのクライン社長は、「会社の将来を考えて、今行動しなくてはならない」と述べ、早期退職勧奨だけではなく、工場閉鎖や解雇の可能性も示唆した。

 SZは人員削減の理由として、モビリティー転換を挙げた。同紙は「EVシフトの影響で、内燃機関の車の部品への需要が減少した。ZFは、EV需要の増加を見込んで多額の投資を行ったが、ドイツなど欧州諸国ではEV需要が冷え込んでいるため、生産能力が過剰になった」と分析する。

 報道機関や労働組合によると、ZF以外にも、ヘラー、ベバストなどの部品メーカーが合計1万人超の人員削減を検討。ある企業コンサルタントのアンケートによると回答企業の60%が人員削減を計画中だ。

 ドイツの『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』は8月5日電子版で「ドイツのコンチネンタルは、25年末までに、収益性が低い自動車部品部門をスピンオフし、収益性が高いタイヤ事業に専念する」と報じた。経済紙『ハンデルスブラット』は8月6日付電子版で、「コンチネンタルは、これまで数十億ユーロを投資して、センサーやブレーキなど自動車部品部門を拡充してきた。今回同社がこの部門の分離を打ち出したことは、経営陣の過去の戦略が間違っていたことを示しており、敗北と呼ぶべきだ」と論評した。同国では「タイヤ事…

残り752文字(全文1452文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事