戦前の日ソ武力紛争の真相を追う戦後の女性編集者の闘いが今につながる仕掛け 濱田元子
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舞台 青年劇場「失敗の研究─ノモンハン1939」
過去の悲惨な経験から人間は何を学んできたのか。二つの戦争が続き、おびただしい血が日々流されている中、あらためてそんな思いが湧き上がってくる。
2年前、古川健(劇団チョコレートケーキ)の書き下ろし戯曲「眞理の勇氣─戸坂潤と唯物論研究会」を、鵜山(うやま)仁(文学座)の演出で上演し、ファシズムから思想の自由を守ろうとした知識人に迫った青年劇場。
劇団の創立60周年記念公演として、同じ古川×鵜山のコンビにより、現代日本に突き付けるのが「失敗の研究─ノモンハン1939」だ。
「ノモンハン事件」は日米開戦前の1939年5~9月、当時日本が支配していた満州国と、モンゴル人民共和国との国境線を巡ってハルハ河付近で起こった武力紛争だ。物量で圧倒的に勝っていたソ連軍などの前に日本軍は約2万人の命を失い、敗北を喫した。
村上春樹が長編小説『ねじまき鳥クロニクル』第2部で、ノモンハン事件を重要な挿話として描いていることでも知られている。
なぜその「失敗」の教訓が、後に生かされなかったのか。これまで自身の劇団でも総力戦研究所を扱った「帰還不能点」や南京事件に迫る「無畏(むい)」など、日本の過去の戦争に材を取ってきた古川。今回は、1970年の出版社を舞台にしたフィクションで分析し、考察を巡らせていく。
当時はベトナム戦争真っただ中。数少ない女性編集者として他部署から抜てきされた沢田利枝(岡本有紀)は、長期連載企画として「ノモンハン事件」を提案する。編集部に反対されたが、大物小説家の馬場貫太郎(吉村直)の発案であったことから企画は通り、先輩編集者の後藤稔(矢…
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週刊エコノミスト
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