IT（情報通信）システムの老朽化による日本企業の生産性低下への懸念が強まっている。海外のITや介護人材の紹介などを手掛けるZenkenが中小企業の経営者を対象に実施したアンケートによると、老朽化した基幹システムの更新と技術者不足が重なる「2025年の崖」問題を「知らない」「詳しく知らない」と回答した人が８割に達した。中小経営者の自社ITシステムへの無関心や理解不足は、日本の生産性や国際競争力の低下につながる恐れもある。

　調査は全国の中小企業の経営者を対象に９月２～３日に行い、200件の回答を得た。対象となった業種は、サービス業、製造業、建設業、不動産業、小売業、卸売業、金融・保険業など。

「2025年の崖」は経済産業省が18年にまとめたDX（デジタルトランスフォーメーション）に関する報告書で指摘した。企業のITエンジニア不足が強まるなか、老朽化した基幹システムの維持費が増える状況を「崖」に例えている。老朽化したシステムを放置した場合、新しい技術が出てきたとしても取り入れることができない。システムトラブルやサイバー攻撃のリスクも高まる。システムの刷新やDXに十分な人材や資金を回せなければ、25年以降に年間で最大12兆円もの経済損失が生じる恐れがあるという。

　中小経営者に「『2025年の崖』が来年に迫っていることを知っているか」と聞いたところ、「知っている」と答えた経営者は19％にとどまった（図１）。最も多かったのは「知らない」で56.5％、次に多かったのは「聞いたことはあるが、詳しく知らない」で24.5％だった。「知らない」「詳しく知らない」を合計すると81％に達し、大半の経営者がこの分野につて知識不足であることが浮き彫りになった。

「社内で利用しているシステムの老朽化や複雑化への不安はあるか」との質問に対しては「ある」が39.5％にとどまり、「ない」が60.5％に達した（図２）。

「システムの老朽化に対応できる人材が社内にいるか」と聞いたところ、「いない」との回答が64.5％に上った（図３）。「ＩＴ人材の採用の予定はあるか」との質問に対しては「ない」との回答が63％に達した。多くの中小企業の経営者がＩＴ関連の人材不足やシステム更新などに対応できていないことが分かった。（編集部）