習氏「発病」説で権力抗争の主舞台は中央軍事委へ 金子秀敏
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中国指導部の権力抗争は党中央軍事委員会内の主導権争いになってきた。個人独裁を強めてきた習近平国家主席は、中央軍事委主席も兼ねる。7月の共産党第20期中央委員会第3回総会(3中全会)で、会議中に習氏が脳梗塞(こうそく)の発作を起こしたとのうわさが流れると習氏に反発する党内機運が一気に高まった。
3中全会後に発表された公報は習氏のスローガン「深化改革」が消え、改革派の最高指導者だった鄧小平氏の「改革開放」が復活した。習氏の個人崇拝記事や映像を流していた党メディアも、「民主集中制」の論調に変わった。
目立ったのは軍の機関紙「解放軍報」だった。張又侠・軍事委副主席の発言として「軍事委主席責任制の制度化、規範化」を報じた。「主席責任制」は習主席が7人制の軍事委員会を経ず、直接、連合参謀部参謀長を指揮する主席独裁の仕組みで、それに対し張氏は軍事委合議のルールを強調し、対抗した。
また軍事委員の一人、苗華・政治工作部主任は合議を重視する「民主集中制読本」を配布。以前の「習主席の指導に従う!」など習氏個人に忠誠を誓う号令が消えた。
習氏は3中全会以後、8月末までベトナム共産党書記長ら数人の外国首脳との会談を除いて表に出ていない。出た時も、メディアに流れるのは表情のわからないロングショットの映像ばかり。影武者説も根強く、習氏の健康不安による求心力低下は明らかだった。
軍事委内の反習派委員は、張、苗両氏の他、劉振立・連合参謀部参謀長、張昇民・軍紀律検査委書記の4人。習派は習氏と何衛東・副主席の2人で、2対4で習氏が不利だ。残る1人の委員は、昨年国防相を解任された李尚福氏だったが、現在は空席。李氏…
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週刊エコノミスト
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