日米政府も乗り出した米国の日本語教師育成事業の意義 谷川喜祥
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9月に入り、学校が新年度を迎える中、伝統ある日本語教育プログラムで知られる高校が、そのプログラムの歴史に幕を下ろした。同校は全米でも指折りの日本語コンテスト「全米ジャパンボウル大会」の上位校の常連である。将来世代に学習機会を残すべく、在校生がプログラムの継続を求めて立ち上がり、1300人を超える賛同者を得たが、覆ることはなかった。
日本語教育プログラムが廃止・縮小の危機にある学校は少なくない。学校運営上の判断という側面もあるが、深刻化しつつある要因の一つに日本語教師不足がある。最近も、新年度開始直前に公立高校の日本語教師を急きょ募集するメールが拡散された。
教師の補充ができなければ、学生が履修を希望してもプログラムは存続できない。こうした話は中等教育に限らず、大学などの高等教育においてもしかり。在米の日本語教育者の危機感は募るばかりだ。
低い待遇、資格取得困難
そして、その危機感に拍車をかけているのが、教員の高齢化である。今年4月にAATJ(全米日本語教育学会)が主催したオンライン会議システム「Zoomウェビナー」において、日本語教師の高齢化と次世代の人材不足の問題がテーマとして取り上げられた。
国際交流基金の21年度日本語教育機関調査によれば、米国内の教師数は4109人。MAATJ(中部大西洋岸日本語教師会)が23年10月に実施したアンケートによると、現役の日本語教師で最も多い年代は46~55歳であり、今後10年間で退職年齢(65歳)に達する割合は4割近かった。逆に、過去5年間で日本語教師になった人の数が半減したことを示す結果が出ていることも紹介された。
米国で日本語教師とし…
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週刊エコノミスト
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